2023年ノーベル賞と過去の日本人受賞者について知っておこう!【大学受験の面接対策】

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10月9日に、2023年ノーベル経済学賞の受賞者が発表されました。これで「物理学」「化学」「生理学・医学」「文学」「平和」「経済学」の6分野すべての発表が終わりましたが、残念ながら今年は日本人の受賞者がいませんでした。

大学入試の面接において、ノーベル賞について質問されることがあるのを知っていますか?
何事も準備が肝心。予想外の質問をされて焦ってしまうことがないよう、自分の進む分野に関係ある賞については、一通り頭に入れておくと安心です。
今回は、各分野の2023年受賞者と、直近の日本人受賞者についてまとめていきます。

2022年の受賞者についてはこちらの記事で確認できます!

2022年ノーベル賞と過去の日本人受賞者について知っておこう!
10月10日に、2022年ノーベル経済学賞の受賞者が発表されました。これで「物理学」「化学」「生理学・医学」「文学」「平和」「経済学」の6分野すべての発表が終わ...

そもそもノーベル賞とは?

ダイナマイトの発明で知られる、スウェーデンの化学者アルフレッド・ノーベルの遺言から始まった、100年以上の歴史を持つ栄誉ある賞です。
受賞者にはメダルと1億円ほどの賞金が贈られ、かつては故人も表彰の対象でしたが、1974年以降は存命の人間のみとなっています。

ノーベルは破壊力のあるダイナマイトが戦争の抑止力になると考えていましたが、結果的には戦争の激化を加速させてしまい、「死の商人」と称されることもありました。
意図せぬ形で評価を下げてしまったために死後の評価が気にかかり、遺言という形で未来の発明家や研究者たちのためにノーベル賞を設立した…というわけです。

元々遺言にあるのは「物理学」「化学」「生理学・医学」「文学」「平和」の5分野でしたが、1968年に「経済学」賞が設立されました。
後発の「経済学」については、正式にはノーベル賞としては認められておらず、「アルフレッド・ノーベル記念 スウェーデン国立銀行賞」と称されています。

面接によく出てくる話題は?

日本人が受賞した年は、特によく質問されます。『○○さんがノーベル賞を受賞しましたが、知っていますか?』という形式が多いでしょう。
もちろん「知っています」という確認や、「すごいと思います」という単純な感想を求められているのではありません。
聞かれることの多い『最近気になったニュースはありますか?』という質問と同様、その事例を知って、「自分の考え方がどう変わったか」「何を初めて認識することができたのか」ということを聞きたいのです。

焦らず返答するには、事前に準備して内容を把握しておく必要があります。
日本人の受賞者や、自分が進学する分野に関連する内容については、必ず確認しておきましょう。

ノーベル物理学賞

物理学賞は、「天文学(宇宙)」「原子物理学」「素粒子物理学」などの研究から選ばれ、日本人の受賞者が一番多い分野です。
近年は「気象学」や「地球科学」といった領域からも選出されており、改めて物理学というのは、身の回りのあらゆるものや現象に関連する学問だということがわかります。

今年の受賞者

2023年 ピエール・アゴスティーニ(アメリカ/フランス) & フェレンツ・クラウス(オーストリア/ハンガリー) & アンヌ・リュイリエ(スウェーデン/フランス)

3人は、それぞれ「アト秒」と呼ばれる非常に短い瞬間のみ光を発生させる方法の開発・発展に関わり、医療や電子工学の可能性を広げたことが評価されました。

「アト」とは、10のマイナス18乗です。「0.000000000000000001」秒の間のみ光を発生させる…というのはあまりに小さな数字で、イメージするのも難しいですよね。
よく小さいものの単位として使われる「マイクロ」が10のマイナス6乗、「ナノ」がマイナス9乗と考えると、「アト」秒がいかに短いかがわかるでしょうか。

物質を形成する複数の「原子」。その原子同士が組み合わさるときに働くのが、原子の周りを回る「電子」です。
原子や電子の動きを理解することが、様々な研究において重要となりますが、特に電子の動くスピードは非常に速く、従来の方法では観測することが不可能でした。
そこに「アト秒パルス光」と呼ばれる、きわめて短い瞬間にのみ光を発生させる方法が使用されるようになり、今までは不可能だった素早い動きの観測ができるようになった…というわけです。
今回のみの功績ではなく、今後の研究が発展していくための大事な第一歩になったという点が、高く評価されたポイントだと言えるでしょう。

直近の日本人受賞者

2021年 真鍋 淑郎(アメリカ/日本) & クラウス・ハッセルマン(ドイツ) & ジョルジョ・パリージ(イタリア)

日本出身の真鍋 淑郎(まなべ しゅくろう)さんは、1975年にアメリカ国籍を取得し、プリンストン大学で気象学を長年研究してきました。
現在では広く知られている「二酸化炭素と地球温暖化の関連性」ですが、真鍋さんは50年以上も前から研究を始めていました。コンピューターを使ったシミュレーションにより、地球温暖化や気候の変化を予測するための先駆者となったことが評価され、受賞に至ったということです。

気象や気候の研究分野がノーベル物理学賞の対象となったのは、今回が初めてだったこともあり、話題となりました。
また、受賞インタビューにおいて、日本を離れアメリカ国籍を取得して研究を続けていることについて聞かれ、「日本では周りとの調和が求められ、好きな研究ができないこと」「研究に使える予算が少ないこと」を挙げていたのも、日本国内の研究者育成において考えさせられる印象的なシーンでした。

豆知識

物理学賞は、2015年に「ニュートリノ」の研究で受賞した梶田 隆章(かじた たかあき)さんや、2014年に青色発光ダイオードの発明が評価された、赤﨑 勇(あかさき いさむ)さん・天野 浩(あまの ひろし)さん・中村 修二(なかむら しゅうじ)さんなど、12人の日本人が受賞しています。
日本人のノーベル賞受賞者は全分野合計でも29人と欧米諸国に含まれない地域では最多であり、その半数ほどが物理学というのを考えると、偉大な物理学者を多数輩出している国と考えられるかもしれません。
※日本出身で外国籍取得者を含む

ただし、真鍋さんのように渡米し、日本ではなくアメリカに活躍の場を移す研究者も少なくありません。2014年の中村さんや、2008年に「自発的対称性の破れ」で受賞した南部 陽一郎(なんぶ よういちろう)さんは、研究の拠点とするアメリカの国籍を取得し帰化しています。
自分が関心を寄せるものについてとことん追求したい場合は、海外にも目を向ける必要があるのかもしれませんね。

ノーベル化学賞

化学賞は、「有機化学」や「無機化学」をはじめ、非常に幅広い分野から受賞者が選ばれます。
元々化学者であるノーベルが、遺言の中で物理学に続く2番目に挙げている分野であり、化学者にとって非常に栄誉ある賞と言えるでしょう。
「キュリー夫人」として伝記でもよく知られるマリ・キュリーが、1911年ラジウムの発見により受賞した賞でもあります。(1903年には、放射能の研究により物理学賞も受賞しています)

今年の受賞者

2023年 ムンジ・バウェンディ(アメリカ/フランス) & ルイ・ブラス(アメリカ) & アレクセイ・エキモフ(アメリカ/ロシア)

3人は、それぞれ「量子ドット」の発見と合成に携わった功績が評価され、受賞しました。

量子ドットとは、「ナノ」サイズの結晶です。物理学賞でも触れましたが、10のマイナス9乗というきわめて小さな結晶ですね。
輝度(明るさ)が高く鮮やかな発色の光を発せられる粒子であり、LED照明やテレビ・パソコンなどのディスプレイとして広く活用されています。
今後の電子機器の発展における貢献度も間違いなく高く、私たちの暮らしをより豊かにする上で欠かせない技術と言えるでしょう。

一方、今回は発表の約4時間前に「受賞者のリストが事前に流出する」という、前代未聞の事件がありました。
その点でも、注目度の高い受賞だったと言えるかもしれません。

直近の日本人受賞者

2019年 吉野 彰(日本) & ジョン・グッドイナフ(アメリカ/ドイツ) & スタンリー・ウィッティンガム(イギリス/アメリカ)

名城大学 大学院教授の吉野 彰(よしの あきら)さんが、リチウムイオン電池の発明により受賞しています。

ニッケル電池など従来の電池は、まだ容量が残っている状態での充電をくり返してしまうと、電池自体の容量が減ってしまう現象(メモリー効果)が起こってしまいました。
しかし、リチウムイオン電池はそれがないため、何度もくり返し充電できます。また、時間が経つにつれて自然と消費されてしまう電力も少なく、電池そのものの寿命をのばすことができたのです。

今ではコンセントにつなぐだけですぐに充電できる携帯用ゲーム機も、20年ほど前までは使い捨ての乾電池を毎回交換していました。
パソコンや携帯電話をはじめ、現在も多くの電子機器に搭載されているリチウムイオン電池が、IT機器の普及にどれだけ貢献してきたかがよくわかりますね。

豆知識

日本人のノーベル化学賞受賞者は、1981年にアジアで初めて受賞した福井 謙一(ふくい けんいち)さんを始め、唯一大学院を出ずに受賞したことも話題になった2002年の田中 耕一(たなか こういち)さんなど、物理学賞に次ぐ8人です。

過去の受賞者に目を向けてみると、現在も化学の教科書に名前を残している研究者が少なくありません。「ハーバー・ボッシュ法」を開発した、フリッツ・ハーバーとカール・ボッシュもそれぞれ受賞しています。(ボッシュは、ハーバーの13年後に高圧科学的方法の発明により受賞)

物理学や生物学の研究・開発につながるような発見も多く、化学系統以外に興味がある人も、過去の内容を調べてみると興味深い研究が見つかるかもしれません。

ノーベル生理学・医学賞

面接を必須とすることが多い医療系の学部では、ノーベル賞について聞かれることが少なくありません。
生理学・医学賞のみ、別の記事にまとめているので、ぜひ確認してみてくださいね。

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ノーベル文学賞

文学賞は、その名の通り文学において顕著な貢献を果たした作家に送られます。
『老人と海』で知られるアーネスト・ヘミングウェイや、日本人で初めて受賞した川端 康成(かわばた やすなり)など、小説家や詩人が選ばれることが多いですが、2016年にはアメリカの歌手であるボブ・ディランが選ばれ話題となりました。
過去にも哲学者であるバートランド・ラッセルや、政治家のウィンストン・チャーチルが受賞しており、いわゆる文学作品以外が対象になることもあるようです。

今年の受賞者

2023年 ヨン・フォッセ(ノルウェー)

今年の文学賞は、ノルウェーの劇作家であるヨン・フォッセさんが受賞しました。
ノルウェーの作家としては、1928年以来、実に95年ぶりの受賞となります。

フォッセさんの作品は40以上の言語に翻訳され、日本も含め世界中で上演されています。
受賞理由として「声なきものの声を代弁している」と語られているように、斬新かつ豊かな表現が評価されたのでしょう。

直近の日本人受賞者

1994年 大江 健三郎(日本)

大江 健三郎(おおえ けんざぶろう)さんは、『万延元年のフットボール』などの作品で知られる作家で、川端 康成以来26年ぶりに日本人の受賞者となりました。30年近く経つ2023年現在も、日本人受賞者はこの2人だけです。

2017年には、『わたしを離さないで』などで知られる、カズオ・イシグロさんが受賞しました。
イシグロさんは長崎県で日本人の両親のもと生まれましたが、小学生の頃にはイギリスで暮らすようになり、英文学作家として評価されています。
ただし、幼少期に見た日本映画の影響も受けていて、日本を舞台とした作品も存在しており、日本でも人気の作家となっています。

豆知識

歴代の受賞者を見ても欧米の作家が大半を占めており、やはり世界中で読まれている作品が評価される傾向にあります。
川端 康成が受賞したのも、当時「受賞者が西洋の作家に偏りすぎているため、日本の作家に賞を与えるべきだ」という批判を受けていたことが、理由の一つだとされています。

ノーベル賞の選考課程は、発表後50年間公表されないため、実際にどういった作家が当時評価されていたのかはわかりません。ここ十数年の間、受賞するのではないかと期待されている村上 春樹(むらかみ はるき)さんが、どう評価されているのか…が具体的にわかるのは、少なくとも今から30年後になるでしょう。

ノーベル平和賞

残した業績について時間が経ってから評価されることが多い科学系の3分野と比べ、平和賞は現在進行形で活動している人物が評価されることもあり、受賞後の活動で評価を下げてしまうケースも少なくありません。
また、「個人だけでなく団体も対象になる」「スウェーデンではなく隣国のノルウェーで授賞式が行われる」など、ほかの分野とは異なる特徴があります。
平和賞については各国で議論されるデリケートな内容を含むため、今回の記事では筆者の思想を挟まないよう、簡潔にまとめます。

今年の受賞者

2023年 ナルゲス・モハンマーディ(イラン)

今年の平和賞は、イランの人権活動家であるナルゲス・モハンマーディさんが受賞しました。
選考委員会は受賞理由について、「イランにおける女性に対する弾圧に抵抗し、人権と自由を守るために戦った」としています。

直近の日本人受賞者

1974年 佐藤 栄作(日本)

「非核三原則」で知られる佐藤 栄作元首相が、唯一の日本人受賞者です。

ノーベル経済学賞

先述の通り、遺言にはなかったため「厳密にはノーベル賞ではない」とされていますが、賞金額などは変わらず、経済学において最も権威ある賞の一つに数えられています。
研究内容がすぐに評価されるわけではなく、後発の研究に与えた影響が評価されるため、研究発表から数十年経った後に受賞するケースが少なくありません。

今年の受賞者

2023年 クラウディア・ゴールディン(アメリカ)

今年の経済学賞は、ハーバード大学のクラウディア・ゴールディン教授が受賞しました。

彼女は、労働市場における男女間の格差をなくすべく、アメリカの市場における200年ものデータを集め、研究を行いました。
その結果、「男女間の格差をなくすために、企業が柔軟な働き方を認める」ことを論理的に後押しした点が評価されたようです。

経済学賞の女性受賞者は、今回で3人目となりました。

直近の日本人受賞者

受賞者ナシ

2023年時点で、日本人の経済学賞受賞者はいません。歴代の受賞者を見ても圧倒的にアメリカの経済学者が多いことがわかります。

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