この記事では、共通テスト「世界史B」について具体的な内容と、試験に向けて有効な対策法を解説していきます。
出題内容
共通テスト「世界史B」は、大問5つで構成されており、小問数は34題程度です。
配点
共通テスト「世界史B」の配点は100点です。
試験時間
共通テスト「世界史B」の試験時間は60分です。
共通テスト「世界史B」の特徴
共通テスト「世界史B」の特徴として、国公立大学の二次試験や私立大学の問題とは異なり、資料・会話文を読み取って解答する問題が多数出題されることが挙げられます。資料・会話文の読み取りを求められる問題は、資料(文章 1~3つ)を読み取らせる問題、資料(文章・グラフ・統計資料等)とそれにまつわる会話文を読み取らせる問題など多岐に渡ります。また過去には、異なる見方に関する問題など独特な形式の問題も出題されています。ただ、求められている知識は基礎的なものがほとんどであるため、基礎をしっかりと固めて、独特の出題形式に慣れることができれば高得点をとることができることでしょう。
共通テスト世界史Bの攻略法
共通テスト「世界史B」では、国公立大学の二次試験や私立大学の問題ではあまり問われることがない、資料・会話文を読み取らせる問題をはじめとする独特な形式の問題が出題されるため、これらの問題を攻略できるかどうかがカギとなってきます。
問題例
具体例を見てみましょう。クリックすると表示されます。
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B ある大学のゼミで、学生たちが、「中国史の中の女性」というテーマで議論をしている。(引用文には、省略したり、改めたりしたところがある。)
藤 田:次の資料は、顔之推(がんしすい)が6世紀後半に著した『顔氏家訓(がんしかくん)』という書物の一節で、彼が見た分裂時代の女性の境遇について述べています。
【資 料】
南方の女性は、ほとんど社交をしない。婚姻を結んだ家同士なのに、十数年経っても互いに顔を合わせたことがなく、ただ使者を送って贈り物をし、挨拶を交わすだけで済ませるということさえある。
これに対し、北方の習慣では、家はもっぱら女性によって維持される。彼女らは訴訟を起こして是非を争い、有力者の家を訪れては頼み込みをする。街路は彼女たちが乗った車であふれ、役所は着飾った彼女たちで混雑する。こうして彼女たちは息子に代わって官職を求め、夫のためにその不遇を訴える。これらは、平城に都が置かれていた時代からの習わしであろうか。
山 口:中国には、「牝鶏(めんどり)が朝(あした)に鳴く」ということわざがあり、女性が国や家の事に口出しするのは禁忌であったと聞きます。資料の後半に書かれているように、女性が活発な状況が現れた背景は、いったい何でしょうか。
藤 田:著者の推測に基づくなら、( イ )に由来すると考えられます。
中 村:あっ! ひょっとして、この時代の北方の状況が、中国に女性皇帝が出現する背景となったのでしょうか。
教 授:中村さんがそのように考える根拠は何ですか。
中 村:ええと、それは( ウ )からです。
教 授:ほう、よく知っていますね。
山 口:資料にあるような女性の活発さが、後に失われてしまうのはなぜでしょうか。
藤 田:ⓑこの時代以降の儒学の普及とともに、資料中の南方の女性のような振る舞いが模範的とされていったためと考えられます。
問4 文章中の空欄( イ )に入れる語句として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
① 西晋を滅ぼした匈奴の風習
② 北魏を建国した鮮卑の風習
③ 貴族が主導した六朝文化
④ 隋による南北統一
【解説】
資料・会話文を読み取らせる問題の例として、2023年度 共通テスト「世界史B」 第1問 B 問4の問題です。
資料は藤田さん(1回目の発言)が述べている通り、6世紀の分裂時代、つまり南北朝時代のことを記した資料です。資料の後半に書かれているような女性が活発な状況が現れた背景は何でしょうか?という山口さん(1回目の発言)の疑問に対して、藤田さん(2回目の発言)が( イ )に由来すると考えられますと答えています。よって、( イ )には山口さんの疑問に対する回答が当てはまるということになります。資料を読んでみると、第1段落では漢人王朝があった南部の女性は社交的ではないと書かれています。それに対して、第2段落では北方民族の王朝があった北部の女性は活発であったことが書かれています。そして、第2段落の最後に「これらは、平城に都が置かれていた時代からの習わしであろうか。」とあります。つまり、女性が活発な状況が現れた背景には、平城に都を置いた北方民族の王朝があった時代からの風習があったということが読み取れますね。しかし、これを資料から読み取っただけでは解答することはできません。「平城に都を置いた北方民族の王朝」が何か判断する必要があります。それは鮮卑が建国した北魏ですよね。よって、問4の解答は②となります。
難しい文章を読解する必要があるわけでも、難しい知識が求められているわけでもありませんが、問題形式に慣れていなければ瞬時に解答することはなかなか難しいでしょう。何が問われているのかを正確に把握して、その解答に必要な箇所を、資料が示す地域・時代を考慮しながら読み取るという解き方に慣れるまで、過去問題等を通じて練習をしてみましょう。
共通テスト対策「これだけはやめて!」
共通テスト「世界史B」に限った話ではありませんが、単純に用語名を覚えるだけでは太刀打ちできません。その用語の意味・内容や、各時代・地域の歴史の流れやその時代の状況をしっかりと理解できていることが重要になります。
問題例
具体例を見てみましょう。2022年度共通テスト「世界史B」 第4問 B 問5 では、次の問題が出題されています。
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世界史上の税制の歴史について述べた文X~Zのうちから正しいものを一つ選べ。
X イギリス東インド会社は、インドの農民から直接に徴税を行うザミンダーリー制を整備した。
Y 共和政ローマでは、騎士身分(騎士階層)が属州の徴税を請け負って、富を蓄積した。
Z イギリス政府は、北アメリカ植民地の抵抗にもかかわらず、印紙法を撤回しなかった。
※実際の問題は文中の空欄補充と、上の問題の正しい選択肢の組み合わせを問う問題です
【解説】
正しいことを述べている文がどれか分かりますか?
答えはYですね。
Xについて、インドの農民から直接に徴税を行う制度はザミンダーリー制ではなく、ライヤットワーリー制です。Q:インドのイギリス支配地域で実施されていた制度2つは? A:ザミンダーリー制・ライヤットワーリー制 のように一問一答的に覚えてしまっていた方には正誤の判断がつかない選択肢だったのではないでしょうか?
またZについて、印紙法は撤回されたので誤りです。こちらも Q:植民地の人々が「代表なくして課税なし」というスローガンの下で制定に抵抗した、あらゆる印刷物に印紙を貼付することを義務づけた法律は? A:印紙法 のように印紙法という用語名を覚えるだけで満足してしまっていた方には誤りだと判断できなかったことでしょう。
一問一答形式の問題集等で用語名を覚えるだけで満足するのではなく、その用語の意味・内容や、各時代・地域の歴史の流れやその時代の状況をしっかりと理解するようにしましょう。
過去問題の活用
共通テスト「世界史B」を攻略するためには、その独特な問題形式に慣れることが重要です。問題形式に慣れるためにも、過去問題に繰り返し取り組んでみましょう。
高1高2生の共通テスト対策
現在の高3生は「世界史B」ではなく、「歴史総合、世界史探究」という新しい科目で受験することになります。文部科学省が公開している試作問題では、これまでの「世界史B」と同じような形式の問題が出題されているため、共通テスト「世界史B」の過去問題等に取り組むことは有意義なことです。
しかし、従来の「世界史B」と大きく異なる点として、大問5つのうち、第1問(配点25点)が歴史総合からの出題になる点が挙げられ、試作問題では歴史総合の日本史分野からも出題されています。ただ、日本史分野について求められている知識は中学歴史程度の易しいものですので、高校の歴史総合の授業の内容をしっかりと復習すれば問題ないでしょう。