共通テスト英語 問題の傾向と対策 (リーディング・リスニング) | 大学入学共通テストポイント解説

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大学入学共通テスト(共通テスト)で、最も受験者が多い「英語」。文系、理系問わずに、ほとんどの受験生にとって必須の受験科目であるため、入試の結果に大きく影響します。
共通テストの「英語」は、2020年度まで実施されていた大学入試センター試験に比べて難化したと言われており、受験生の実感としてもその通りでしょう。しかし、平均点は6割程度と、実はセンターと大きく変わっているわけではありません。受験生が「難しい」と感じるのは、単純な知識だけで解ける問題がなく、大量の英文を素早く、正確に読みこなし、効率よく問題を処理していかなければならないという共通テストの作りに原因がありそうです。このような特徴を持つ共通テストの英語で高得点を取るためには、一般的な受験勉強に加え、共通テストの内容を熟知し、適切な対策を積み重ねる必要があります。共通テストを短期集中型の勉強で乗り切るのは難しいため、高校1、2年生のうちから本試験の内容をチェックして、「どのような試験なのか」「どのような学力が必要なのか」を体感しておくことが大事です。
ここでは、共通テストの「英語」について具体的な内容と、試験に向けて有効な対策法を解説していきます。

動画で共通テスト英語の対策を見る

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出題内容

共通テスト「英語」は、「リーディング」と「リスニング」に分かれており、それぞれが別のテストとして実施されます。「ライティング」「スピーキング」の出題はありません。また、全問マーク式による問題で、記述式の問題は含まれません。
センター試験の筆記試験においては、発音・アクセントや語彙・文法から、整序、会話、さらに複数の読解問題と、出題内容が多岐に渡っていました。しかし、共通テストの「リーディング」はすべて読解問題のみで構成されており、この点がセンター試験との大きな違いです。文法や語彙のような知識問題はなく、読解問題しか出題されないため、思考力や情報処理力が高いレベルで求められる試験であると言えます。なお、文法や語彙のような単純な知識問題はありませんが、これらの知識は英文を正確に読む上で大前提となる力ですので、しっかりと学習しておく必要があります。

配点

共通テスト「英語」の配点は、「リーディング」「リスニング」それぞれ100点、合計200点満点です。
センター試験の配点は「リーディング」が200点、「リスニング」が50点、合計250点満点でしたから、共通テストでは「リスニング」がより重要になったと言えます。

なお、「リーディング」と「リスニング」の配点比率は、各大学が独自に決められるため、必ず1:1というわけではありませんが、従来以上にリスニングの学習に力を入れなければならないという点は間違いありません。

試験時間

共通テスト「英語」の試験時間は、「リーディング」80分、「リスニング」30分、合計110分です。
それぞれの試験は共通テスト第1日の最後に設定されている「外国語」の中で、「リーディング」「リスニング」の順で実施されます。

共通テスト英語の特徴

リーディング

まず、【出題内容】でも説明した通り、センター試験と比べて出題内容が大きく変わっています。センター試験のような発音や文法・語彙、整序を扱う大問は一切なく、それぞれの読解問題の中にもそういった類の設問はありません。つまり、すべての問題においてまとまった英文を読んで、内容を理解した上で答え判断する必要があります。
個々の設問についても、単純に英文の一部を読み取れれば答えが出る一般的な設問だけでなく、センター試験では目にしなかったような設問がいくつも見られます。たとえば、「客観的な事実」と「主観的な意見」を区別する設問や、複数の出来事を時系列通りに並べ替える設問、あるいは複数の文章や、図、グラフに含まれる情報を横断的に読み取って正解を判断する設問などは特に際立って特徴的なものであると言えます。

具体例を見てみましょう。クリックすると表示されます。

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【2021年度 共通テスト 本試験 第1日程 第4問】


この問題では、姉妹校からやって来る学生とどのように時間を過ごすのかについて相談するEmma(先生)とNatsuki(生徒)によるメールのやり取り、電車の時刻表、水族館の混雑予想グラフが提示され、1日のスケジュールの流れや具体的な行動について、複数の情報を比較・検討しながら正解を判断していく必要があります。日本語ならすんなり理解できるような内容ですが、英語で異なる情報を見比べながら詳細を判断するのは非常に骨の折れる作業です。加えて試験時間も厳しいため、かなり英語に慣れていないと大幅に時間を要してしまいます。本番では、この第4問でつまずいたという受験生も多くいたと思われます。
一方で、英文そのもののレベルは難関私大や国公立大学の二次試験ほどではなく、ごく標準的ですから、正確に英文を読む力が身についていれば答えを出すこと自体は難しくありません。きっちり勉強している受験生であれば、十分な時間が与えられれば内容は理解できるでしょう。

出題内容の変更に加え、分量という点でも共通テストとセンター試験のリーディングは大きく異なります。センター試験最後となる2020年の試験では約4,300語だった語数が、最新の2022年度共通テストでは約6,000語と、読むべき分量が大幅に増えています。その一方で試験時間は同じ80分のままであるため、受験生はより短い時間でより多くの英文を読まなければならなくなったと言えます。英語が苦手な受験生からすると、時間内に本文を読むだけでも大変な分量であるのに、複雑な問題も短時間で処理していかなければなりません。しかも、英語は試験初日の最後に実施されますので、そこまでの疲労もあります。言うまでもないことですが、共通テストをうまく乗り切るためにはしっかりとした準備が必要になるわけです。

英単熟語の暗記

最後に、受験生共通の悩みとして「英単熟語の暗記」があります。センター試験と共通テストで試験内容や分量については大きく変わりましたが、テストで要求される語彙のレベルはそれほど変わっていないため、共通テストに変わって難化したとは言えません。ただし、共通テストではセンター試験と比べて、英文のテーマや場面設定が多様で、より実生活に即した内容になっていますから、国公立二次や私大で頻出の評論文でよく目にする単語はもちろんのこと、普段の学習や模試などで生活に密着した単語を目にしたときには積極的に覚えるように心がけましょう。

リスニング

センター試験から共通テストに移り、リスニングも、リーディングと同じく出題内容が大きく変更されました。従来のセンター試験は、会話かモノローグ(ある内容について、一人の人物が英文を読み上げる形式)を聞き取って4択で適切な答えを選ぶという、ごくオーソドックスな内容でした。しかし、共通テストではそういった問題も出題されつつ、聞き取った英文の意味に最も近い英文を選ぶ、出来事を時系列通りに並べ替える、聞き取った情報をもとに資料やノートを完成させるなど、非常に多彩な出題形式を通して受験生のリスニング力が測られるようになっています。音声のある一部分が聞き取れれば解答できるような問題は少なく、また、聞きながら資料内の空欄を埋めるといった並行作業が求められるため、センター試験に比べて格段に難化したと言えるでしょう。しかも、センター試験ではすべての音声が2回ずつ読み上げられていましたが、共通テストでは難易度の高い後半の問題はすべて1回しか音声が読み上げられません。さらに、リーディングと違ってリスニングは決められた時間通りにテストが進行しますので、自分のペースで問題を解くこともできません。そのため、英語を聞き取る力は言うまでもなく、30分間意識を切らさずに英語を聞き続ける集中力も今まで以上に必要とされます。

共通テスト英語の攻略法

リーディング

英語に限らず、共通テストのいずれの科目にも言えることですが、「模試で時間が足りない」「本番の時間配分はどうしたらいいか」という質問が受験生から頻繁に寄せられます。特に英語のリーディングでは時間内に問題を解き切るために、英文を迅速かつ正確に読めるだけでなく、解答に必要な情報を効率よく拾い上げていく必要があります。内容を正確に読めることは大前提であり、そこからさらに読解速度、情報処理能力も高いレベルで求められます。また、読むべき語数が多いということはそれだけ脳への負担も大きくなるため、普段からいろいろなトピックの英文に触れたり、意識的に長めの文章を読んだりして、大量の英文にへこたれない頭の体力を培っていくことが、リーディングを攻略する上で重要な対策となります。

過去問と学習スケジュール

さらに、これはセンター試験にも言えることでしたが、共通テストの英語はリーディング、リスニングともに、年度によって多少の変化はあっても、基本的には出題の内容や形式が決まっているため、同じような問題を使った練習を繰り返すことで、出題形式への慣れや時間感覚が磨かれ、得点アップが期待できます。そのため、文法や構文、語彙の基礎を身につけたら、過去問や模試など、共通テストと似た作りの問題を活用したトレーニングに繰り返し取り組んでいくのが良いでしょう。ただし、闇雲に量をこなせば良いというわけではなく、最終的には根本的な読解力が得点を左右するということに間違いはありません。よって、共通テストで高得点を取るためには、質と量の両方を踏まえた学習を計画的に進めていくことが求められます。
詳しくは【過去問題の活用】でも解説します。

リスニング

まず、英語のリスニング対策として理解しておきたいのは、短期間に集中してたくさんの音声を聞いてもあまり効果は上がらないということです。英語を聞き取ることの難しさは、すでに皆さんも学校の学習などを通して気づいているのではないでしょうか。リスニングは、特に長期間の地道な学習が必要になります。加えて、共通テストのリスニングは、センター試験よりも難易度が上がっていますので、付け焼刃の対策では全く対応できません。ですので、「毎日決まった時間を英語のリスニングに充てる」「英語の音声を自分でも声に出してみる」といった、英語の音を意識した学習を少しずつでも良いので、毎日の学習に取り入れるように意識しましょう。
その上で、今日テスト本試験のリスニング対策について考えてみましょう。まずリスニングでは次々に英文が読み上げられていくため、受験生自身が解答時間をコントロールすることはできません。試験は淡々と進行していきますから、リスニングの最中はとにかく集中力を切らさず、テストの流れに乗ってテンポよく解答していくことが大事です。そのためには、まず出題形式をしっかりと把握しておく必要があります。試験の概要と個々の問題での出題内容が分かっていると本番で慌てることがなくなります。また、後半の問題では事前に資料や選択肢を読む時間が与えられますので、そこで何をどこまで確認しておくのかといった時間の使い方について事前に戦略を立てておくこともリスニング対策として欠かすことはできません。特に第3問以降は一度しか音声が読み上げられませんので、事前準備が非常に重要になってくるということをおさえておきましょう。

聞き逃したら…⁉

当然のことながらリスニングは聞き逃してしまうと正解を判断できなくなります。しかし、特に難関国公立大学を目指す受験生であれば8~9割以上の高得点を目標としているため、聞き逃した問題を落としたくないという意識が働き、考え込んでしまうことがあります。すると、そこでリズムが崩れて後の問題にまで影響が及び結果的に得点が下がってしまうことにもなりかねません。「聞き逃した」「うまく聞き取れなかった」と考え込んでしまいそうになったら、その問題はスパッと忘れて次の問題に気持ちを切り替えます。その方が全体として、得点が上がる可能性が高まると言えます。過去問題や類似問題に取り組む際には、そうした「試験の乗り切り方」のシミュレーションもしておくと安心です。

共通テスト対策「これだけはやめて!」

共通テストの英語は、リーディング・リスニングともに制限時間、分量ともに厳しいテストです。そのため、共通テスト対策として「なんとなく読む・聞く」「ダラダラ解く」といった勉強は厳禁です。共通テスト「英語」を攻略するためにはタイムマネジメントが欠かせませんから、リーディングなら「この大問は〇分で解く」、リスニングなら「準備時間1分でここまで確認する」といった形で、目的意識を持って対策を進めていきましょう。

四谷学院
四谷学院
四谷学院では、55段階個別指導の問題において目標解答時間を明示しています。これは、時間を意識した勉強になるようにという目的があります。常にタイムマネジメントを念頭に置いた実戦的な演習を重ねることで、時間内に問題を解き切る解答力を養います。

過去問題の活用

先に述べた通り、共通テストのリーディング、リスニングは、ともに特徴的で一筋縄ではいかないテストですが、出題内容はある程度決まっているため、事前に対策が立てやすいとも言えます。同じような問題を繰り返し解くことで、形式に対する慣れや時間配分についての感覚が鋭くなっていき、結果として得点する力が上がっていきます。共通テスト対策では「過去問」「模試」「類似問題」を積極的に活用しましょう。特に過去問は最も信頼のできる教材で、現時点で過去2年、合計4回分の過去問があります。まだまだ数は少ないですが、同じ問題を繰り返し解いてもテスト対策としての効果は期待できますので、ぜひ有効活用してください。
その際の注意点として…ただ問題を解くだけではなかなか身になりません!「この問題では、○分しか使わないぞ!」といった具合に、時間を意識して取り組むようにしましょう。

四谷学院
四谷学院
四谷学院では、55段階個別指導の段問題(初段から10段)で共通テストの過去問やオリジナルの類題を使った実戦演習を繰り返します。さらに、集団授業で実施される夏期・冬期・直前の各講習でもオリジナルの模擬問題を使った実戦演習を行い、必要十分な量の学習を確保しています。もちろん、問題演習の後には講師による解説がありますので、自分一人で問題集を解く学習とは理解度・定着度が全く異なります。
四谷学院では55段階個別指導と集団指導という2つの学習を通して、共通テストで高得点を取るための解答力を養成しています。

共通テスト英語 問題の傾向と対策 (リーディング・リスニング) まとめ

繰り返しお伝えしてきましたが、共通テスト「英語」では、短い制限時間内に大量の英文を読み、聞きながら、テキパキと答えを判断していく必要があります。このような共通テストの英語で良い結果を出すためには、十分な知識を身につけた上で、その知識を活用しながら英文の内容を適切に理解する思考力も合わせて伸ばしていくような学習が必要です。
さらに、基本的なリーディング、リスニングの学力を伸ばしていくのはもちろんのこと、大量の英語を前にしてもひるまない気持ちの強さも大切です。知識や思考力だけでなく、頭の体力までを含めた総合的な英語力が求められるという点で、特に英語が苦手な受験生にとっては厳しいテストであり、最初はテスト対策がうまく行かないかもしれません。

ただ、共通テストの英語は、特徴的ではあっても決して難しいテストではありません。英語の基礎力を磨きながら、日々英語に触れる時間を積み重ねることで、英語を理解する力、英語を読み続ける(聞き続ける)体力は着実に伸びていきます。そこに加えて過去問や類題を用いた演習を通して傾向・パターンに習熟することで、必ず結果を出せるようになりますので、自分を信じて学習を進めましょう。

高1高2の共通テスト対策

共通テスト対策は一朝一夕にはなりません。今、高1や高2で難関校を目指す受験生は、「高3になってからぼちぼち始めよう」などといった悠長な考えは禁物です。あなたが望む結果を得るために、まずは、今すぐに過去問題を「見る」ことからはじめましょう。共通テストがどういった試験であるかが見えてくるはずです。その上で、一刻も早く共通テストを見据えてスタートしましょう。対策は早ければ早いほど有効なのですから。

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