こんにちは、四谷学院です。
今回は、現代文の読解問題について「速く文章を読むにはどうしたらよいですか?」という質問に答えていきます!
目次
目・手を速く動かすのと、速く読むことは別物!
まず勘違いしてほしくないこととして、目・手を速く動かせるということと、速く読めるということは全く別の問題である、ということをお伝えしておきます。
模試や演習をしている様子を見ていると、せわしなく何回も冊子を前後に往復している生徒がいます。
ものすごく処理が速いように見えますが、残念なことに、そういう生徒は得てして解くのが遅いです。
文章を速く読むコツというのはいくつかありますが、そのどれも、「せわしなく何回も冊子を前後に往復して読む」ことを要求しません。「急げば速くなる」という固定観念を捨てましょう。「急がば回れ」で行きましょう。
文章を早く読むコツ(1)予測力を高める
きっとこういうことが書いてあるだろう、という予測がある程度できるようになると、自然と読むスピードも上がってきます。
そうした「予測力」を高めるためには、具体的にどんな方法があるでしょうか?
関心を持つ
自分の知っている分野の文章のほうが、読みやすいですよね。
自分の趣味を一つ思い浮かべてみてください。
その趣味についての文章はかなり読みやすいと感じるのではないでしょうか。私なら「野球」についての文章とかです。
対して、たとえば、「前近代と近代における共同体の在り方の対比」とかになると、途端に読みづらく感じたりすることもあるのではないでしょうか。
知識の幅を広げ、読みやすいと感じる文章ジャンルを増やしていくことが速度の上昇につながります。
「町内会って何であるんだろう」
「地域の防災活動って消防隊だけじゃダメなの?」
こういったことを少しでも考えたことがある人と、考えたことがない人では、「共同体」という用語のとらえ方から全然違っているのではないでしょうか。
まずは世界の様々な事象に関心を払い、疑問を抱くこと。
「詩とは何か」「翻訳家の仕事を奪うレベルの翻訳機が完成したら語学学習の意味はなくなるか」「どこでもドアをくぐった前後の野比のび太は本当に同一人物か」「科学の発展で人間は幸福になったか」
色々なことを考えましょう。そうすることで、文章の内容が「はじめまして」ではなくなりますし、その先の展開も予想しやすくなります。
論理構造に気を配る
絵の値段が「号いくら」という数値によって決められるあの習慣は、いったいいつから始まったことなのだろう。
(大岡信『抽象絵画への招待』)
という文を見たとき、この先の展開が予想できるでしょうか。
「『号いくら』という数値」という表現は、絵の値段を「定量化」する、という意味を持つでしょう。それならば、対置されるのは「量」の逆、「質」との対比が展開されることが予想されます。
もっといえば、「量」「定量化」は、「細分化」とかかわっていて、科学、要素還元主義の見方とつながります。そう捉えるなら、「質」は、「非細分化」とかかわって展開していくと予想できます。
対比・対義語は文章の先を読むために非常に重要です。理解をするため、だけではなく、先を読むために、対比を探してください。
一語から得られる情報量を増やす
「対象化」という語句を説明できますか?
「私はそういう男にあこがれてしまう」は、つまりこの「男性」像がひとつの幻想にほかならぬことの対象化である。そしてそれが対象化(=距離をとって見ること)であるからこそ、「あこがれ」は、自分はもはやその幻想の内側で生きていることはできない、というディスイリュージョンの自覚をもあやうく結んでいるわけだ。
(竹田青嗣『陽水の快楽』より)
この文章、「そしてそれが対象化(=距離をとって見ること)である」箇所は単なる「対象化」の説明です。
短い部分ですが、「対象化」の意味を知っていればこの箇所はきちんと読まなくてもよいわけです。「必ずしも知っている必要はないが知っていたら楽な語」というのはたくさんあります。日ごろから辞書を引いたり、先生に聞いたりしながら、語彙力の増強に努めましょう。
(参考記事)
文章を速く読むコツ(2)挙動の無駄を徹底的に省く
現代文の文章を読むとき、文章に書き込み、していますか?
「書き込みはしている」が「書き込みの意味はない」という人は大変多いように思います。
例えば・・・逆接の接続詞に「▽」を付ける人、多いですね。
何の意味があってやっているかご自身でお分かりですか?説明できますか?
書き込みというのは、
②あとから読み返す必要性を限りなくゼロにする
本文を読み返す必要が生じても、メモだけを見て内容を振り返られるようなメモ・本文書き込みをしましょう。
こういう力は、実は授業の中で磨かれます。あとから読んでわかるノートをとる技術。その力は、あとから読んでわかる書き込みをする技術につながっていきます。
文章を速く読むコツ(3)同義表現に敏感になる
評論の場合
具体例や、前の文の換言については、基本的に読み流して構いません。急に話題が変わることもあるので全部読むべきですが、チェックするべきポイントは「今までと違う話をしているか」の一点に尽きるため、割合すらすら読めるはずです。
日ごろから具体抽象を切り分ける、同義表現をイコールで結ぶなどの練習が必要です。
小説の場合
読むべきポイントは割合限られている(登場人物の心情に関係する場所と状況が主)ので、ポイントを探す意識で読んでいくと、闇雲に読むより大幅に時間を抑えられます。
文章を速く読むには?読むスピードを速くする3つのコツーまとめ
ここまであまた見てきましたが、読む速度を上げる特効薬はありません。何か問題を一つクリアすることで劇的に速くなるということはありません。ここに挙げた一つ一つを実践すると、少しずつ読むのが速くなるでしょう。
結局のところ、ある意味愚直に、自らの一挙手一投足を見直す営みの中でしか、読解は磨かれません。すぐに結果が出ることはないかもしれません。
しかしありがたいことに、多くの受験生は現代文の勉強方法を知らない、わからない、わかろうとしない、そもそもやらないという愚を犯し続けています。
学べばその分、周りと差がつくのは早い。
適切なやり方を知り、学んだものは必ず活きます。安易で派手な方法に頼ろうとせず、実直に文章と向き合いましょう。