こんにちは、四谷学院で地理を教えている矢ヶ部です。
本格的な夏が到来し、非常に暑くなってきました。それに伴い、セミの声も聞こえてきましたが、今日はセミを含めて多様な生物を育んでいる森林について考えてみたいと思います。
「地理総合」とは
2022年度より高校では「地理総合」が必修となりました。その内容は「持続可能な地域づくりと私たち(自然環境と防災、生活圏の調査と地域の展望)」です。中でも地球的課題として森林破壊があり、最近のニュースでも多く取り上げられているのを見聞きしているかと思います。「地理総合」では、社会的事象の地理的な見方・考え方を働かせ、課題を追究したり解決したりする活動を通して、資質・能力を育成することが、学習の目標としても掲げられています。
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日本の森林面積は?
日本の森林面積は約2,502万ヘクタールです。国土の約3分の2を占め、豊かな森林に恵まれています。そのため、木材自給率は1955年には96%ありました。
しかし、2000年には19%まで落ち込み、現在は約40%です。この背景には何があったのでしょうか。これを紐解くために、日本の林業の課題について考えていきましょう。
なぜ林業が衰退したのか
私は学生時代に地理学研究室に所属し、教授と共にある過疎地域で林業の研究に携わったことがあります。そこはいわゆる限界集落であり、高齢者が人口の半数以上で、主産業が農業や林業でした。私に課されたミッションは、統計ではわからないことをアンケート調査により聞き取るというものでした。つまり、Aさんの所有している山地面積は役所で調べればわかるものの、Aさんに後継者がいるかどうかは役所の資料ではわかりません。このような情報を聞き取り、過疎地域における林業の実態について研究しました。
その地域で林業を営まれている方々のほとんどが高齢者であり、聞き取れた内容の一例として以下のようなものがありました。
・後継者がいない
・林業で生計を立てるのは難しい
・年を取って林業を続けにくい
これらの問題の背景には、安価な外材の輸入が大きく関わっていると考えられます。
日本は新期造山帯に属しており山がちなため、多伐採コストが高くなってしまいます。一方で、ロシアやカナダなどは安定陸塊が主であるため比較的平地であり、効率的に伐採することができます。そうすると、安価に輸入できる外材に依存するようになり、日本の木材は売れにくくなって産業が後退し、後継者が不足するという悪循環に陥ります。
このような理由で、日本の木材自給率が急降下したという背景があります。
↓
日本は安価な外材に依存
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林業が産業として後退
↓
後継者不足
一方で、この20年間で自給率が少し回復したのは、東南アジアをはじめとする国々で、自国産業の育成や環境問題の観点から木材の原木での輸出が規制されはじめたことが一因です。
以上のような課題があり、日本の林業は厳しい状況に置かれてはいますが、前述のように自給率は回復してきており、また、かつて植林されたスギなどが伐採適齢期を迎えており、同時に国の林業政策もあって林業の若年層従事者の割合が少し回復したという話もあります。
地理で学べること
このように地理の授業では、複合的なものの見方も身につけることもできます。今回は森林・林業を例に挙げましたが、地理で学んだことは我々の社会と直接関係しており、今後の日本社会を考えるうえでも非常に役立つということもお判りいただけたでしょう。一問一答形式の参考書や問題集を使い「大学受験のため」に地理を学ぶことも大切ですが、受験を超えたところにも地理の授業で学んだことが関わってくるため、引き続き地理の学習を続けてくださいね。
四谷学院では「なぜそうなるのか」という観点から地理を学べます。
夏期講習では「共通テスト地理」、「地形図ゼミ」、「地理論述演習」、「日本地誌」、「まだ間に合う!地理徹底復習」などの、あなたの志望校に応じた様々な対策講座が用意されています。
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