「kg」の定義が変わる?物理単位のはなし

この記事は約3分で読めます。


こんにちは、四谷学院の奥野です。

「1 kgの定義が変わるかもしれない」

こんな話を聞いたことがあるでしょうか?
ウソのような話ですが、ホントなんです。

今回はこの話題に絡めて、受験にも役立つ物理のお話をご紹介します。

物理において「単位」とは?

物理において、単位は決定的に重要です。すべての物理量は、単位を元にして「その何倍か」という形で把握されるからです。そのため、国際単位系(SI)では単位は可能な限り厳格に決められています。

例えば最も基本的な単位であるm(メートル)は、

1秒の 2億9979万2458分の1の時間に 光が真空中を伝わる距離

として定義されています。

逆に言えば、光は真空中を1秒間に299,792,458m進むわけです。
これは「距離を測る精度が上がれば小数点以下も求められるようになる」のではなく「光が1秒間に進む距離を 厳密に299,792,458m」と決めてしまうわけです。

同様に、時間の単位であるs(秒)も、セシウム133原子133Csの状態を基にした厳密な定義があります。

ところが・・・
長さ、時間と並ぶもう1つの最も重要な物理量である質量の単位kg(キログラム)だけは、厳密な定義を定めることができないまま今に至っています。

「kg」の歴史

歴史的に見ると、メートル法は18世紀のフランスで生まれていて、1 kgの一番おおもとの考え方は「1リットルの水の質量」でした。

しかし、水の体積は温度によって変化しますし、また気圧の影響も受けます。

そのため、温度等の外部条件が受けにくい物質として、現在では白金とイリジウムの合金でつくられた「国際キログラム原器」が、キログラムの定義となっています。
国際キログラム原器と同じ質量のものが、1 kgということです。
この国際キログラム原器は世界に一つしかなく、その複製が各国に配られています。

しかし、いかに安定な物質といえども、時間の経過とともにわずかずつですが質量が変化してしまいます。
基準となる1 kgを決めるものの質量が変化したら、それに合わせてありとあらゆる物質の質量が変化してしまうことになり、不都合なことこの上ありません。

プランク定数による定義

メートルと同様にもう変わりようがないものを元にして1kgを定義する方法が検討されてきました。
現在、提案されているのは、プランク定数hをもとにした定義です。

プランク定数は、原子物理の勉強にまだ入っていない人は習っていないことになりますが、真空中の光速c、万有引力定数Gと並ぶ最も基本的な物理定数で、その値はおよそ

です。ここでは、hの単位に着目してください。このJ・sという単位は、

ですから、hの値を厳密に定めてしまえば、その定義とmおよびsの定義から、kgも厳密に定められるわけです。

2018年の国際会議に向けて、このプランク定数による厳密な定め方が検討されており、晴れて新しい定義が採択されれば、国際キログラム原器はその使命を終えることになるわけです。

まとめ

受験では時事問題をチェックすることも勉強のひとつです。
受験勉強をきっかけにアンテナを広くすることでは、小論文などでも役立つかもしれませんね。志望校に関係のある分野はとくに関心を深めておきましょう。

四谷学院は、クラス授業と55段階個別指導の『ダブル教育』で、志望校合格まで一貫サポートをします。
詳しくは入学説明会でお話しています。まずはお気軽にホームページをご覧ください。

タイトルとURLをコピーしました