こんにちは!四谷学院 受験コンサルタントチームの伊達です。
法学部への進学を考えている高校生から、以下のような相談を受けることがあります。
『ドラマで弁護士に憧れを持ったけれど、具体的にどういう仕事をしているのかわからない。』
『法学部はほかの学部と比べて進学後が大変と聞きました。検察官になりたい気持ちもそこまで強いわけではないので迷っています。』
たしかに、「法学部はほかの学部よりも大変だ」という話はよく耳にします。
それは、出席点などをあまり評価に含まず、定期試験の結果だけで成績を決めることが多いからでしょう。
授業にただ出るだけでなく、復習を徹底して内容を理解する必要があります。(法学部以外でも授業に出席するだけで満足するのはやめましょう)
弁護士や検察官、裁判官になるためには、司法試験という合格率50%未満の国家試験に合格する必要があります。
難関試験で合格点がとれる人材を育むべく、得点を重視した判定基準になっているのかもしれませんね。
もちろん、必修科目に法律関連のものが多く、「正確に理解しているか」「しっかり覚えているか」を見る必要がある…というのもあるでしょう。
もちろん法学部に進学した全員が、卒業後も法律関連の仕事に就くわけではありません。
法学部進学を迷っている人は、以下の記事も参考にしてみてくださいね。
今回は、司法試験に合格した場合、具体的にどんな仕事に就けるのかを確認していきます。
なりたい職業が決まっている人も、そうでない人も、改めて将来を考えるきっかけになれば幸いです。
次回の記事では、「弁護士になるためには具体的にどういうルートなのか」「そもそも何大学に進むのが良いのか」についてお伝えします。
法律の専門職には何がある?
まずは、「法曹」と呼ばれる、3種類の専門職について簡潔に確認しましょう。
いずれも司法試験に合格し、約1年間の司法修習を受けてから、それぞれの仕事に就くことになります。
弁護士
私たちが「法律の専門家」として真っ先にイメージするのが、弁護士でしょう。
「民事」と「刑事」それぞれの分野で、法律の知識を活かし、依頼人の立場や利益を守ることが仕事です。
近年は「法テラス」やインターネット上の相談サービスができたことで、以前よりも依頼や相談がしやすくなり、身近に感じやすい存在になってきているとも言えます。
ちなみに、検察官や裁判官が国家公務員であるのに対し、弁護士は民間人となります。
公務員は基本的に副業ができませんが、弁護士は可能というわけです。(所属する弁護士会に届出が必要)
タレント弁護士はよく見かけますが、タレント裁判官がいないのは、このような事情もあるのかもしれませんね。
民事
離婚や相続といった個人間のやり取りから、企業間でのトラブルまで、様々な事件において弁護士は活躍しています。
警察官は「民事不介入」として、どちらかに肩入れすることができない…というのは聞いたことがありますよね。
そのようなケースこそ、集めた証拠を基に相手を追及していく弁護士の存在が大きいのです。
日常生活に密接した問題を扱い、場合によっては和解に動いたり、あるいは訴訟し裁判で戦ったりと、「依頼人を守ること」を最優先に働きます。
そのため、明らかに依頼者の方に非がある、不得意な分野であるといったケースでは、依頼を断ることも可能です。
刑事
罪を犯してしまった人や、その疑いがある人(被告人)に対し、「刑法」と「刑事訴訟法」に基づき、有罪か無罪か、有罪の場合の刑罰を決める手続きが、刑事事件です。
個人間で和解することもある民事と異なり、国家から罪や責任を問われ刑罰を決定します。
弁護士は、その裁判で被告人の弁護を行い、判決が不服であれば控訴や上告の手続きを進めます。
ちなみに、日本の刑事裁判は99.9%が有罪になると言われています。
これは「確実に有罪となる事件」を選んで裁判が開かれている(起訴されている)からです。
民事と刑事は完全に別物
民事事件と刑事事件は根拠とする法律が完全に異なります。
よく耳にする「六法」のなかでも、民事は「民法」と「民事訴訟法」を、刑事は前述の通り「刑法」と「刑事訴訟法」を基準に判断します。
そのため、ひとつの事件について、民事と刑事の両方で訴えられることもあります。
たとえば交通事故を起こしてしまった場合
被害者の車が破損したなど、経済的な補償を要求される可能性があるのが「民事事件」です。
さらに、被害者が亡くなってしまったとすると、過失運転致死罪や危険運転致死罪が成立し、刑罰が科される「刑事事件」にも発展します。
依頼者が弁護士を探す際は、得意分野を確認して依頼することがほとんどです。
関連するケースを多く担当し、実績を積み上げていくと、その分野において信頼を得られる弁護士になり、仕事も増えていくでしょう。
検察官
検察官は、刑事事件について徹底的に調べ上げ、裁判にかける(起訴する)かどうかを判断する役割です。
何か事件が起こった場合、まずは警察が犯人を逮捕するための証拠を探します。
それと協力して、起訴の判断をするために検察官も事件現場などの捜査を行っているのです。
日本の刑事裁判における有罪率がほぼ100%であることからも、徹底的な捜査が行われていると想像できますね。
裁判へ発展してからは、被告人が犯した罪を説明する「冒頭陳述」や、「求刑」を行います。
その間に行われる弁護人との論争は、ドラマなどでもよく目にしますよね。
さらに、有罪が確定したあと、被告人に刑を執行するのも検察官の仕事です。
弁護士と検察官は裁判において対立する立場になりますが、どちらも同じ司法試験に合格する必要があります。
同じ大学で学んでいた知り合いと、法廷で対峙することがあるかもしれません。
「検事」という名称で耳なじみのある人もいるでしょう。
検察官は「検事」や「副検事」の総称であるため、「検事になりたい」=「検察官になりたい」という認識で問題ありません。
裁判官
裁判官は、裁判において有罪か無罪の判決を下し、有罪の場合には刑罰の重さ(量刑)を言い渡す役割です。
司法試験を合格し、晴れて裁判官になれたとしても、すぐに1人で裁判を行えるわけではありません。
最初は「判事補」となり、地方裁判所や家庭裁判所に配属されます。
「合議体」と呼ばれる裁判官組織のメンバーとして、裁判を担当し経験を積んでいく必要があるのです。
そして10年ほどの実務経験を積むと「判事」に任命され、高等裁判所などに配属されます。
判事になって初めて、単独事件を担当し、1人で審理を行って判決を下すことができるのです。
「控訴」や「上告」という言葉を聞いたことがありますよね。
裁判の判決に不服がある場合は、正しい裁判が実現できるよう、原則3回まで審理を受けられる「三審制」という形がとられているのです。
第二審…第一審の判決に不服申し立て(控訴)があると、高等裁判所で再度裁判が行われます。
第三審…第二審の判決に不服申し立て(上告)があると、最高裁判所で最後の裁判を行います。
最高裁判所はもちろん東京の1か所のみで、裁判官も長官を含めて15名で構成されています。
2024年7月には、今崎幸彦氏が最高裁判所の長官として任命されました。
「法学部に進むならどの仕事を目指すべき?」まとめ
今回は、いわゆる「法曹」と呼ばれる3つの職業について確認しました。
いずれも法律のエキスパートとして、知識や経験を積み上げていく必要のある仕事です。
どの仕事に就く場合も、司法試験という高い壁を突破しなくてはいけません。
大学生活を存分に楽しみつつ、学びの機会である授業や講義は積極的に活用しましょう。
単位をとって卒業するため…ではなく、自分の将来のための学びにしてくださいね。
司法試験の受験資格や、具体的な道のりは、次回の記事で確認していきます。
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