こんにちは!四谷学院 受験コンサルタントチームの伊達です。
工学系の中でも志望する人が多い「航空・宇宙工学」の分野。
しかし、実際にどの大学であれば専門的に学ぶことができるかは、意外と知られていません。
「どの大学を選べば良いんだろう?」「ちょっと調べてみたけれど、選択肢が少なそうだぞ…」と、不安を覚えている人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、「航空・宇宙工学」を学べる国公立大学について確認していきます。
気になった大学は、自分でも調べてみましょう!
地域別のページでは各大学の紹介もしているので、一覧だけでなくぜひ確認してみてくださいね。
パイロットコースも含めた、私立大学の一覧は以下の記事から確認できます!
目次
【偏差値別】航空・宇宙工学を学べる大学を一覧でチェック!
前期日程
偏差値 | 大学 | 学部(学科) |
73 | 東京大学 | 理科Ⅰ類 |
69 | 京都大学 | 工(物理工) |
65 | 名古屋大学 | 工(機械・航空宇宙工) |
64 | 東北大学 | 工(機械知能・航空工) |
60 | 横浜国立大学 九州大学 | 理工(機械・材料・海洋系) Ⅲ群/Ⅳ群 |
59 | 東京農工大学 東京都立大学 | 工(機械システム工) システムデザイン(航空宇宙システム工) |
58 | 大阪公立大学 | 工(航空宇宙工) |
55 | 静岡大学 | 工(機械工) |
54 | 九州工業大学 | 工(工学2類/3類/5類) |
50 | 鳥取大学 高知工科大学 | 工(機械物理系) システム工学群〈B方式〉 |
49 | 高知工科大学 | システム工学群〈A方式 |
48 | 室蘭工業大学 山口大学 | 理工(創造工) 工(機械工) |
中期日程
偏差値 | 大学 | 学部(学科) |
66 | 大阪公立大学 | 工(航空宇宙工) |
後期日程
偏差値 | 大学 | 学部(学科) |
69 | 九州大学 | Ⅲ群 |
68 | 九州大学 | Ⅳ群 |
62 | 東京農工大学 横浜国立大学 | 工(機械システム工) 理工(機械・材料・海洋系) |
60 | 東京都立大学 | システムデザイン(航空宇宙システム工) |
57 | 静岡大学 九州工業大学 | 工(機械工) 工(工学3類/5類) |
56 | 九州工業大学 | 工(工学2類) |
52 | 鳥取大学 高知工科大学 | 工(機械物理系) システム工学群 |
51 | 山口大学 | 工(機械工) |
49 | 室蘭工業大学 | 理工(創造工) |
【地域別】航空・宇宙工学を学べる大学を細かく確認!
北海道地方
室蘭工業大学(北海道)
後期:理工学部 創造工学科(目標偏差値:49)
室蘭工業大学の理工学部 創造工学科には、「知能機械・航空宇宙工学コース」があります。
2年次の前期までは複数の工学分野の知識を身につけ、後期からは6つのコースのうち自分が関心を持った専門分野を選ぶ形です。
「ロケット工学」や「空気力学」といった理論を学ぶだけでなく、実習が多いこともコースに分かれて専門的に学ぶ魅力でしょう。
実際に航空機の機体を作成し、飛行させる講義などもあり、より実践的な学びを得ることができます。
卒業後は約2/3の学生が、大学院の「生産システム工学系専攻」に進んでいます。
こちらには「航空宇宙総合工学コース」があり、北海道という地の利を活かして、企業や機関と連携した研究を行うことが可能です。
東北地方
東北大学(宮城県)
後期:なし
JAXAの角田宇宙センターがあることで知られる宮城県では、東北大学で航空宇宙工学について学ぶことが可能です。
工学部の機械知能・航空工学科は細かく8つのコースに分かれています。
「航空宇宙コース」には、JAXAや航空機メーカーと共同研究を行っている教員が多く、より専門的かつ実践的に学ぶことができるでしょう。
大学院では「工学研究科 航空宇宙工学専攻」に所属し、「シミュレーションサイエンス」と「スペーステクノロジー」をテーマに学びます。
「シミュレーションサイエンス」とは、次世代の航空機を発展させるべく、新素材の強度などをテストするシミュレーション技術を研究開発すること。
「スペーステクノロジー」とは、宇宙ステーションや探査ロボットなど、宇宙開発のための基幹技術のことです。
ここもPoint!
東北大学では、全国でも珍しい「天文学」を学ぶ学科もあります。
「理学部 宇宙地球物理学科」に、天文学専攻があるのです。
工学部は後期日程の試験を実施していませんが、理学部は行っているため、宇宙について学びたいという人は選択肢に入るかもしれませんね。
ただし、後期は求められる得点率も非常に高く、学部間で研究内容は大きく異なるため、航空宇宙工学での第二志望以下をあらかじめイメージしておくことを推奨します。
関東地方
東京大学(東京都)
⇒工学部 航空宇宙工学科
後期:なし
言わずと知れた最難関大学である東京大学。
工学部 航空宇宙工学科の中に「航空宇宙システムコース」と「航空宇宙推進コース」があり、3年生の冬からそれぞれの専修に分かれます。
システムコースでは、空気力学や構造力学、航空機力学などの講義と実習を中心に学びます。
航空機や、人工衛星などの宇宙機について研究し、その全貌を解明していきます。
推進コースでは、ロケットなどの宇宙機を打ち上げる、あるいは惑星間を航行するために必要な推進装置について究明します。
学部卒業後は、そのまま大学院の修士課程に進む人がほとんどで、「工学系研究科 航空宇宙工学専攻」に所属しています。
ここもPoint!
東京大学では、学部ごとの入試は行わず、文系理系それぞれⅠ~Ⅲ類に分けて募集しています。
全員が教養学部に所属し、1・2年次の成績を基に、3年生から各学部へ進学選択(進振り)を行う形です。
注意が必要なのは、各学類から進学する枠が学部によって決まっているという点です。
2025年度の航空宇宙工学科の定員を見てみると、理科Ⅰ類から34名、理科Ⅱ・Ⅲ類から合わせて1名となっています。
東大受験を視野に入れている受験生であれば出願先を間違えることはないでしょうが、この枠(進学定数)も必ず確認しておきましょう。
東京都立大学(東京都)
後期:システムデザイン学部 航空宇宙システム工学科(目標偏差値:60)
東京都立大学のシステムデザイン学部には航空宇宙システム工学科があります。
翼や機体周りの流れの数値計算や空力設計に関する研究を行う「流体力学」、宇宙環境利用や宇宙通信などを実現するシステム技術を学ぶ「宇宙利用工学」など、研究分野は多岐にわたります。
学部を卒業すると2/3ほどの学生は、大学院に進学し、「システムデザイン研究科 航空宇宙システム工学域」に所属します。
修了後は、2/3程度が製造業に就職しており、情報通信業も人気です。
東京農工大学(東京都)
後期:工学部 機械システム工学科(目標偏差値:62)
農業と工業を専門的に学ぶ東京農工大学。
航空宇宙工学を学びたい人は、工学部の機械システム工学科を選びます。
2年次の後期からは「航空宇宙・機械科学コース」と「ロボティクス・知能機械デザインコース」に分かれ、それぞれの専門分野を学んでいく形式です。
約100名の1学年を入学時から2クラスに分け、基礎知識や教養を身につけていく徹底した少人数教育が特徴と言えるでしょう。
30以上ある研究室は、機械システム工学のほぼ全領域をカバーしており、あなたの学びたいことをサポートしてくれるでしょう。
大学院には「工学研究院 先端機械システム部門」があり、次世代の宇宙開発や宇宙環境に優しいものづくりなど、研究を深めることが可能です。
横浜国立大学(神奈川県)
後期:同上(目標偏差値:63)
横浜国立大学の理工学部 機械・材料・海洋系は、3つの教育プラグラム(EP)に分かれています。
その中の「海洋空間のシステムデザイン教育プログラム」では、船舶・海洋工学を軸としながら、航空・宇宙工学についても学びます。
特殊な教育にも見えますが、「流体力学や構造力学など、それぞれの分野の基礎となる学問が共通している」こともあり、専門的な内容まで深く研究することが可能です。
大学院では「理工学府 機械・材料・海洋系工学専攻」において、航空宇宙工学を扱います。
甲信越地方
なし
北陸地方
なし
東海地方
名古屋大学(愛知県)
後期:なし
東海地方は、自動車や航空機など多数の有力企業が拠点を置いている地域です。
そのエリアで最もレベルが高いとされる名古屋大学では、工学部に機械・航空宇宙工学科を置いています。
「航空宇宙工学専攻」のほか、「機械システム工学専攻」,「マイクロ・ナノ機械理工学専攻」に分かれています。
航空宇宙工学はロケットや飛行機そのものをつくるのではなく、エンジンや機体の構造や仕組みといった「要素」の部分を専門的に扱うため、それぞれが異なる知識を深めていきます。
大学院の「工学研究科 機械航空系」に進んだ後は、航空宇宙産業に限らず電力会社や商社など、様々な場所で活躍しています。
ここもPoint!
名古屋大学では、2025年度入試より「女子枠」を設定することになりました。
工学部の機械・航空宇宙工学科はその対象であり、学校推薦型選抜で新たに5名の女子枠を設定しています。
これまでは15名だった推薦枠が、一般枠10名・女子枠5名になり、この道を志す女子生徒にとってはチャンスが増えた形と言えるでしょう。
一方、化学生命工学科とは異なり一般選抜の募集人員は変わらない(一般選抜の枠を減らしていない)ため、対象でない受験生が大きく不利になることはなさそうです。
静岡大学(静岡県)
後期:工学部 機械工学科(目標偏差値:57)
静岡大学の工学部 機械工学科には、「宇宙・環境コース」があります。
1・2年生で基礎教育を受け、3年次から「知能・材料分野」「電気機械システム(光電・精密)分野」、そして「宇宙・環境分野」からコースを選択する形です。
コースには、「航空宇宙分野」「流体環境分野」「熱エネルギー分野」が設置されており、それぞれの視点から航空宇宙や地球環境の技術発展に向けて研究を進めることができます。
大学院では「総合科学技術研究科 工学専攻」として、研究を深めることが可能です。
近畿地方
京都大学(京都府)
後期:なし
関西のトップ大学である京都大学では、工学部の物理工学科で宇宙工学について学ぶことができます。
学科の中でもいくつかのコースに分かれていますが、その中の「宇宙基礎工学コース」を選ぶ人が多いでしょう。
技術や専門知識以上に基礎的科目に力を入れており、さまざまな力学の基礎的原理を徹底的に学んだうえで、各研究へと携わることになります。
その先の大学院へ進み、「工学研究科 航空宇宙工学専攻」として、それぞれの専門分野の研究を深めていく人が大半です。
大阪公立大学(大阪府)
中期:工学部 航空宇宙工学科(目標偏差値:66)
後期:なし
大阪公立大学の工学部には航空宇宙工学科があります。
「宇宙工学」「航空宇宙制御工学」「航空宇宙システム工学」「航空宇宙流体力学」「航空宇宙構造工学」「航空宇宙推進工学」と、6つの専門分野に分かれ技術を磨くことが可能です。
「創造的で柔軟性に富む技術者・研究者の養成」を目標としており、コミュニケーション能力やプレゼンテーション能力の育成にも力を入れたカリキュラムになっています。
卒業生の約8割が、大学院の「工学研究科 航空宇宙工学分野」に進みます。
そこから6割ほどが、航空宇宙関連の企業に就職しており、夢を実現していると言えるでしょう。
ここもPoint!
大阪公立大学は、航空宇宙工学を学べる大学として、唯一中期日程を実施しています。
大阪という場所にあり、元々人気の高い大学ですから、多くの受験生が集まる可能性を考慮しなければいけません。
募集人員は8名と少なく、2024年度入試の倍率は4.3倍となりました。
中国地方
鳥取大学(鳥取県)
後期:工学部 機械物理系学科(目標偏差値:51)
鳥取大学の工学部 機械物理系学科では、2年次から5つのプログラムに分かれます。
「機械工学プログラム」「ロボティクスプログラム」「物理工学プログラム」「医工学プログラム」そして、「航空宇宙工学プログラム」です。
機械工学に次ぐ、2番目に人気のあるプログラムとなっています。
流体力学、熱力学、材料科学、構造力学、制御工学など様々な分野を学び、航空宇宙工学の技術者に必要な総合的素養を身につけることを目指します。
大学院の「工学研究科 機械宇宙工学専攻」でも研究を続けることができ、卒業生の過半数は進学を選択しています。
山口大学(山口県)
後期:工学部 機械工学科(目標偏差値:52)
山口大学の工学部 機械工学科には、「生体・ロボットコース」と「航空宇宙コース」があります。
ほかの大学と異なり、入学前に希望を聞き取ったうえでコース分けを行うため、注意が必要です。
2年次のものづくり創成実習ではグライダーやロケットの製作、3年次の演習ではオリジナルの航空機を設計するなど、実践的な学びを行うことが可能です。
大学院では「創成科学研究科 機械工学系専攻」の中の「航空宇宙エネルギーコース」で研究を続けることができます。
2/3ほどの学生が大学院に進学しており、博士課程に進む人もいます。
四国地方
高知工科大学(高知県)
後期:システム工学群(目標偏差値:53)
高知工科大学のシステム工学群では、1・2年次はものづくりをベースとした工学分野を広く学びます。
そして3年次より、「航空宇宙工学専攻」などから5つの専攻・副専攻を選び、専門性を高めていくことが可能です。
4力学と呼ばれる「材料力学」「流体力学」「熱力学」「機械力学」と、「制御工学」を基本に、航空宇宙工学に関する深い専門知識や技術を身につけていくことを目的としています。
大学院の「工学研究科 基盤工学専攻」には、約1/3程度の学生が進学しています。
「知能機械・航空宇宙工学コース」を選択することで、より深いところまで研究を続けていくことできるでしょう。
また、B方式入試は3教科でも受験が可能なため、私立志望者にとっても大事な選択肢の一つとなります。
九州・沖縄地方
九州大学(福岡県)
後期:工学部 Ⅲ群(目標偏差値:69)
⇒工学部 航空宇宙工学科
九州大学の工学部は、Ⅰ群~Ⅵ群に分かれています。
共通の基礎科目を学んだ後、各学群に対応する学科へ、2年次の後期から所属していく形です。
Ⅲ群からは、「機械工学科」「量子物理工学科」と「航空宇宙工学科」を選択できます。
企業や海外機関との共同研究も盛んであり、専門的に学ぶ環境としてうってつけと言えるでしょう。宇宙飛行士の若田光一さんなど、宇宙開発や航空産業において第一線で活躍する人材を多く輩出しています。
大学院の「工学府 航空宇宙工学専攻」に進み、より専門的に学ぶことも可能です。
ここもPoint!
各学群に対応する学科へ分かれていくのが基本ですが、Ⅵ群では1年間大学で学んだうえでⅠ群~Ⅴ群を選択することができます。
大学で専門的な教育を受けてから、自分の進路を決めることができるのは、大きなメリットですね。
入試での目標偏差値はⅢ群と大きく変わりません。
また、Ⅳ群からは「船舶海洋工学科」を選択できます。
空と海という違いはありますが、機体の構造やエンジンなど似たようなところに関心を持つ人も多く、選択肢の1つとして挙げられるかもしれませんね。
九州工業大学(福岡県)
後期:工学部 工学2類(目標偏差値:56)
⇒工学部 航空宇宙工学科
九州工業大学の工学部は、工学1類~5類に分かれています。
共通の基礎科目や教養を身につけた後、2年次から各学科に所属することになります。
工学部の宇宙システム工学科に所属してからも、「機械宇宙システムコース」「電気宇宙システムコース」のいずれかを選択します。
どちらのコースも宇宙分野に特化した研究を行うことができますが、機械工学を中心としているのか、それとも電気電子工学の視点からアプローチするのかという違いはあるでしょう。
大学院の「工学府 工学専攻」には、宇宙システム工学コースがあり、宇宙システムに関する様々な技術課題について研究を行うことができます。
ここもPoint!
1~5類のうち、2類・3類・5類から宇宙システム工学科に所属することが可能です。
ただし、それぞれの類から各学科に移行できる人数には限りがあるので注意しましょう。
2類は募集人員165名に対し、29名が宇宙システム工学科へ進めます。(17.6%)
3類は144名に対し、18名。(12.6%)
5類は68名のうち8名(11.8%)となっており、2類がもっとも宇宙システム工学科に移りやすい学類…と言えるでしょうか。
入試難易度(目標偏差値)はほぼ変わりません。
まとめ
今回は航空・宇宙工学を学べる国公立大学について確認しました。
ただし、コースの中で専門的に学ぶ大学を挙げましたが、ほかにもその道を目指せる大学はあります。
たとえば機体のエンジンについて深く学びたいのであれば、機械工学と名がつく学科であれば、必要な知識を身につけることができるでしょう。
設計に興味がある場合は、建築工学なども役に立つかもしれませんね。
宇宙について学びたいのであれば、工学とは別の形でもアプローチできます。
たとえばJAXAの宇宙センターがあることで知られる、つくば市の筑波大学では「理工学群 物理学類」がその1つです。
天文学などの観点から宇宙を研究し、まだ謎の多い領域を探究していくことが可能ですよ。
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