こんにちは!四谷学院 受験コンサルタントチームの伊達です。
1995年ごろからインターネットが普及し始め、今では私たちの生活に必要不可欠なものになりました。
電車の遅延状況や天気予報など日常生活の手助けだけでなく、オンライン会議といった「仕事」の場でもなくてはならない存在だと言えます。
それだけ世の中の需要が高まっている「情報」という分野ですから、深く学びたいという人が増えるのは当然でしょう。
18歳人口が減り続けるなかでも、情報系学部の志望者だけは右肩上がりで増えているのです。
生徒から、以下のような質問をされることがあります。
『情報科学科と情報工学科の違いって何ですか?』
『システムエンジニアになりたい場合、どちらを選ぶのが良いですか?』
「情報」と名のついた学部学科はたくさんあります。
また、「データサイエンス学部」など、情報化社会に対応するべく創設された学部も少なくありません。
「法学部」や「医学部」などと異なり、どこを選べば自分のやりたい仕事につながるのか…いまいちよくわからないという人が多いんですね。
そこで今回は、情報科学と情報工学の違いについて、実際の学習内容や就職先を詳しく分析しながら解説します。
ぜひ志望学部を決める際の参考にしてくださいね。
細かい部分は大学によって異なるため、しっかり調べるクセをつけておくと良いですよ。
目次
情報科学と情報工学は何が違う?
「情報科学」と「情報工学」に、大きな違いはない
と言われています。
ただ、「それならなぜ学部や学科名が違うんだろう?」という疑問が生まれますよね。
それぞれ、情報を「科学的」または「工学的」な視点で探究する…という点では異なります。
簡単に説明すると、科学は、対象の原理や構造を探究するもの。
工学は、科学や技術を応用し、物を作り出すもの。
頭の中で理論的に考える、実際に体を動かす、というアプローチの違いがあるように思えますね。
実際に大学のカリキュラムを見ても、ある程度その傾向はあるでしょう。
ただし、情報科学部であっても、実際に技術を身につけることはできます。
情報工学部も、もちろん情報という学問を構造的にとらえることを大事にしています。
それぞれの学部名に、定義的な違いはあまりありません。
「計算機科学」や「データサイエンス」といった名称の学部学科でも、同様の内容を扱っていることが多いですね。
学部や学科の名称は、「自分が興味を持っている分野を扱いそうだな」と、詳しく調べる前のきっかけくらいに考えておいて問題ありません。
とにかく大事なのは、
その大学では何ができるのか
あなたが将来的に情報というものをどう扱いたいのか
をハッキリさせることでしょう。
次項からは、実際に大学のカリキュラムや研究内容を詳しく見ていきます。
カリキュラムで比較しよう
理系の学生に人気が高い東京理科大学。
「工学部・情報工学科」、「創域理工学部・電気電子情報工学科」、「創域理工学部・情報計算科学科」があります。
今回は、この大学を一例として、それぞれの学科の違いを確認していきましょう。
次の表は上から「必修科目」「選択必修科目」「選択科目」の順番です。
必修科目は、卒業するために必ず修得する必要のある科目。
選択必修科目は、指定されている科目すべてではなく、一定数以上の単位修得が必要な科目。
選択科目は、自分の興味関心に合わせて自由に選択できる科目のことです。
それぞれの意味合いを考えると、その学科の主目的や強い分野が少しずつ見えてくるでしょう。
1年次
工・情報工 | 創域理工・電気電子情報工 | 創域理工・情報計算科学 |
「微分積分1・2」 「線形代数1・2」 「物理学1・2」 「情報工学概論」 「離散数学及び演習」 「コンピュータサイエンス 序論」 「情報処理演習」 「数学演習1・2」 「キャリアデザイン」 「プログラミング工学」 「プログラミング演習1」 「工学基礎実験」 | 「線形代数学1・2」 「微分積分学1・2」 「物理学A1」 「基礎情報工学A・B」 「物理学実験A・B」 「基礎電気数学及び演習」 「基礎電気工学」 「電気磁気学A及び演習」 「電気回路A及び演習」 「電気物理学」 「電気電子情報工学デザイン」 「電気電子情報工学概論」 | 「解析学1・2及び演習」 「線形代数1・2及び演習」 「情報数学1A・1B及び演習」 「計算機科学入門及び演習」 |
– | – | 「物理学1・2」 「物理学実験A・B」 「化学」「化学実験」 |
– | 「化学1・2」「物理学A2」 「現代物理学」「図学・製図」 「技術者倫理」 | 「計算機概論」 |
大学数学の基礎と言える線形代数をはじめ、数学や物理の基礎知識を学ぶことがメインとなる1年生。
情報計算科学科のみ、物理学を必修ではなく選択必修にしているのは、工学科との違いとも言えるでしょうか。
学科の全員が共通の内容を学び、自分が専攻とする分野を考える1年になります。
2年次
工・情報工 | 創域理工・電気電子情報工 | 創域理工・情報計算科学 |
「確率統計1」 「応用数学A及び演習」 「応用数学B及び演習」 「論理回路」 「情報工学実験1・2」 「計算理論及び演習」 「プログラミング演習2」 「ネットワークデザイン」 「データ構造とアルゴリズム」 | 「電気磁気学B及び演習」 「電気回路B及び演習」 「応用数学1A・1B」 「応用数学2A・2B」 「電気回路C」 「電子回路A及び演習」 「電子回路B及び演習」 「電気工学実験1」 | 「計算機科学基礎実験」 「計算機科学基礎演習」 「確率論1及び演習」 「情報数学2A及び演習」 |
「電気電子回路」 「確率統計2」「情報理論」 「オブジェクト指向開発」【ソーシャルデザイン分野】 「数理最適化」 | 「電気磁気測定1」 「電子物理学」【電気・制御システム系】 「基礎エネルギー工学」 【エレクトロニクス・マテリアル系】 【情報・通信システム系】 | – |
– | 「電気磁気学C」 「応用数学3」 「電気磁気測定2」 「材料力学」 「機械工学通論」 「マルチメディア表現技術」 | 「情報理論及び演習」 「離散数学」「グラフ理論」 「統計学1及び演習」 「確率論2及び演習」 「プログラム言語A・B」 「論理数学」 「アルゴリズムとデータ構造」 |
2年生になると、学科の特色が少しずつ現れ始めます。
電気電子情報工学科では、電気回路や電子回路が必修科目となっています。
ハードウェアの設計などに関心がある人にとって、早くから専門的に学ぶことができるのはうれしいですね。
情報工学科の方も、選択必修科目になっていることから、しっかり学ぶことができると判断できます。
一方で、情報計算科学科の方は、計算機科学をメインとして扱います。
科学技術計算に必要な「unixオペレーティングシステム」や、プログラミング言語(C言語)の基礎知識を学ぶことで、3年次以降の準備を行うイメージですね。
また、電気電子情報工学科では、2年次から電気系の3分野に分かれていきます。
出願時に分野を選択する「専門コース」と、2年進級時に選択できる「共通コース」があるため、その点も考慮して出願しましょう。
3年次
工・情報工 | 創域理工・電気電子情報工 | 創域理工・情報計算科学 |
「計算機アーキテクチャ」 「オペレーティングシステム」 「情報工学実験3」 「応用情報工学演習」 | 「電気工学実験2」 | 「プロジェクト実験」 「計算機科学応用演習」 「情報科学ゼミナール」 「情報科学コロキューム1」 |
「数値計算」 「モデリング理論」 「線形システム論」 「信号処理」 「ディジタル通信工学」 「コンパイラ」 「技術者倫理」【ソーシャルデザイン分野】 「オペレーションズリサーチ」 【データサイエンス分野】 【ソフトウェアデザイン分野】 【インテリジェントシステム分野】 | 「制御工学1」 【電気・制御システム系】 【エレクトロニクス・マテリアル系】 【情報・通信システム系】 | – |
「技術英語1」「総合工学」 「データベース」【ソーシャルデザイン分野】 「知的財産法」 「ソーシャルデザイン」 「教育システムデザイン」 【データサイエンス分野】 【ソフトウェアデザイン分野】 【インテリジェントシステム分野】 | 「電気英語1・2」 「応用数学4」 「電気工学特別講義」 「電気計測」「電子計測」【電気・制御システム系】 「電気機器学2」 「ロボット工学」 「発変電工学」 「電力系統工学」 「送配電工学1・2」 【エレクトロニクス・マテリアル系】 【情報・通信システム系】 | 【基礎情報数理分野】 【情報データサイエンス分野】 【コンピュータサイエンス分野】 |
3年次からは、その学科がメインとして扱う内容がハッキリと見えてきます。
ただし、よく見てみると、電気電子情報工学科でもプログラミングを履修することができたり、情報工学科でも計算機を必修として扱っていたり、情報に関して広く学べることがわかりますね。
また、情報工学科も情報計算科学科も、このタイミングでそれぞれの専門分野に分かれていきます。
1・2年次に基礎を学び、3・4年+大学院で研究し深めていくのは、理系学部の一般的な流れです。
4年次
工・情報工 | 創域理工・電気電子情報工 | 創域理工・情報計算科学 |
「卒業研究1・2」 | 「卒業研究」 | 「情報科学コロキューム2」 「卒業研究」 |
【ソーシャルデザイン分野】 「オペレーションズリサーチ」【データサイエンス分野】 「多変量解析」 「パターン認識」 【ソフトウェアデザイン分野】 【インテリジェントシステム分野】 | – | – |
□ 「技術英語2」【ソーシャルデザイン分野】 「知的財産法」 「ソーシャルデザイン」 「教育システムデザイン」 【データサイエンス分野】 【ソフトウェアデザイン分野】 【インテリジェントシステム分野】 | 【電気・制御システム系】 「電気機器設計及び製図」 「電気鉄道工学」 「電気法規及び電気施設管理」 | 【基礎情報数理分野】 「複雑さの理論」 「光通信理論」「幾何学」 「応用情報科学」 「情報数学 2B及び演習」 「計算の理論」【情報データサイエンス分野】 「統計学2及び演習」 「統計学3」 「多変量解析」「生命情報学」 「データ解析」 【コンピュータサイエンス分野】 |
学部卒業となる4年次は、学びの集大成として卒業研究を発表します。
研究室に所属し、教授や仲間たちと過ごす機会が非常に多くなる期間です。
情報工学科と情報計算科学科は、3年次と同様の選択科目を受けることができ、学びを深めていくことも可能です。
卒業後の進路で比較しよう
理系の学部は、大学院への進学率が非常に高いというイメージを持っている人も多いでしょう。
文系学部の卒業論文とは異なり、自分の興味・関心を持っている内容を研究していると、学部での4年間だけでは足りない…ということは、実際によくあります。
ここでは、各学科の進路について確認してみましょう。
就職先から逆算して、大学や学部を決めるという人も珍しくありませんからね。
工学部・ 情報工学科 | 創域理工学部・ 電気電子情報工学科 | 創域理工学部・ 情報計算科学科 | |
進学 | 40.4%(38人) | 78.3%(94人) | 42.4%(42人) |
情報通信業 | 34.0%(32人) | 9.2%(11人) | 41.4%(41人) |
専門・技術 サービス | 8.5%(8人) | 0.8%(1人) | 5.1%(5人) |
その他 | 17.1%(16人) 機械器具5.4%(5人)など | 11.7%(14人) 電気ガス水道2.5%(3人)など | 11.1%(11人) 電子部品2.1%(2人)など |
進学率を見てみると、電気電子情報工学科が、圧倒的に高くなっています。
電気自動車やリニアモーターといった、情報工学よりも電気・電子工学の要素が大きい研究をしていると、まず学部での4年間だけでは足りないのでしょう。
情報通信業、NECや富士通といった有名企業に就職する学生も少なくありません。
進学者が半数以下なのは情報工学科も同じですが、情報計算科学科の方が情報通信業に就職している人が多いことがわかります。
早くから計算機科学の技術や知識を習得するため、卒業後の即戦力として活躍できている人もいるでしょう。
その他の割合が一番大きい情報工学科では、機械器具の会社に就職する人も多くなっています。
大学で身につけた工学の知識を、トヨタやホンダといった大企業で発揮していることが想像できますね。
この仕事に就きたいなら何学科が良い?
情報系学部を志望する学生は多いですが、全員が同じ分野に興味があり、同じ仕事に就きたい…というわけではないでしょう。
エンジニアやプログラマーなど、情報の扱い方は様々です。
それぞれの仕事に必要なスキルと、どの学科であれば必要な力を身につけることができるのかを確認していきましょう。
システムエンジニア
仕事内容は?
システムエンジニアは、コンピュータで動作する情報システムの設計・開発を行います。
日本では「SE」と略されることが多く、情報学を履修する学生からは、非常に人気が高い仕事だと言えるでしょう。
システムエンジニアは、新しいアプリやシステムを設計するだけでなく、その全体像を最後まで把握・管理しなければいけません。
実際にそのシステムを構築するために手を動かすというよりも、作業者の進捗を管理したり、納期や予算を意識したりと、管理者としての役割が求められます。
必要なスキルは?
システムエンジニアになるための第一歩として、「情報処理技術者試験」を受ける人もいます。
これは、情報処理に関して必要な知識を問う、1~4レベルに分類された12種類の試験です。
情報系の資格として、「ITパスポート」が有名ですよね。
これも情報処理技術者試験の1つです。
レベルは1、情報における基礎知識と言える範囲であり、合格者は8歳~86歳と幅広い年代で合格者が出ています。
情報処理能力やプログラミングに限らず、管理する立場としてコミュニケーション能力も必須と言えます。
ただ専門知識を身につけるだけでは、周囲とうまく連携をとることができません。
せっかく良いプロジェクトを立ち上げても、信頼できる協力者に支えてもらえなければ、なかなかうまくいかないでしょう。
大学生活は、学科や研究室の仲間と協力して何かを成し遂げる、絶好の機会です。
サークルなどの課外活動も、将来の自分に役立つ経験となるかもしれませんね。
何学科が良い?
システムエンジニアは、システムの理解やプログラミング技術が求められます。
今回挙げた3つの学科のうち、情報工学科と情報計算科学科であれば、そのための時間を過ごしやすいでしょうか。
大学のカリキュラムを確認し、どれくらい授業で触れてもらうことができるのかは、見ておくと良いですね。
また、『大学院卒の方が就職に有利なの?』という質問を受けることもあります。
システムエンジニアの場合は、専門学校からも目指すことができる職業であり、院卒であることや学歴を大きく重視している企業はそう多くないと考えて良いでしょう。
プログラマー
仕事内容は?
プログラマーは、その名の通りプログラムを書く仕事です。
システムエンジニアが設計や管理を担当するのに対し、プログラマーはコードを書いて、その企画を実現できるように動きます。
指定された納期に、注文通りのシステムをつくりあげるべく、コツコツと作業に取り組む必要があります。
新しい情報や技術を常に取り入れながら、日々腕を磨いていきましょう。
必要なスキルは?
プログラマーに求められるのは、何よりも「プログラミングスキル」です。
これがなくては仕事もできませんし、それさえあれば信頼はつかめるとも言えるでしょうか。
また、プログラムは作成中だけでなく、リリースした後のデバッグや不具合対応も重要です。
課題発見能力や注意力、忍耐力も必要とされる職業だと考えられます。
何学科が良い?
システムエンジニアと同様、プログラミング能力を磨ける学科が向いています。
東京理科大学の場合は、情報工学科が一番カリキュラムとしては適しているでしょうか。
また、ほかの大学を見てみると、情報と名のつかない理学部や工学部でもプログラミングを扱った授業は珍しくありません。
独学でさらに腕を磨く必要はあるものの、情報系学部以外からプログラマーになる人も少なくないため、興味を持った分野がほかにもある場合は、そちらを選んでみても良いかもしれませんね。
情報通信業
仕事内容は?
情報通信業は、電話回線などの通信業、インターネットなどの情報サービス業といった、情報通信に関わる業種の総称です。
企業には営業職や企画職などもありますが、情報系学部出身者は技術職を志す人が多いでしょう。
社内ネットワークの管理や、システム開発などを行うことになります。
「情シス」と呼ばれる情報システム部門は、どの企業にも存在するため、就職先の幅は広いと言えるかもしれません。
放送業では、カメラマンや照明、編集といった「裏方」と呼ばれる仕事も技術職とされています。
必要なスキルは?
システムの知識はもちろんのこと、情報の処理や加工技術が求められることも多くなります。
理論だけでなく、実際にネットワーク構築の練習もしておきたいところです。
通信業では、通信速度を上げたり、一度に大量のデータを送信できるようにしたり…と日々新しいシステムを開発できるよう、技術者たちが試行錯誤しています。
何学科が良い?
ネットワークの仕組みを学び、実践的に練習ができるような学科だと、仕事に就いてからも様々なトラブルに落ち着いて対処できるでしょう。
今回のケースでは、情報計算科学科が一番適していると考えられます。
また、通信業や情報サービス業を志す場合は、より専門的に学んでから活躍できるよう、大学院に進む人も少なくありません。
電気電子情報工学科は、その傾向がやや強いと考えられるかもしれませんね。
まとめ「情報科学と情報工学は何が違う?」
今回は、志望校選びで迷いやすい、情報系学部について確認しました。
大学の学部や学科名は、ある程度のルールはあるものの、「同じ名称であれば似たような内容を学べる」というわけではありません。
たとえば「国際」と名のつく学部は多いですが、その違いを明確に答えられる人はだれもいないでしょう。
重要なのは
その大学では何を学ぶことができるのか(カリキュラムを確認する)
あなたが将来的に何をしたいのか(興味のある仕事について調べる)
ということです。
基本的には、情報系の学部や数学・物理を扱うような学科であれば、あなたの進みたい道への扉が閉ざされることはないでしょう。
もし、「自分ひとりでは夢が見つからない」「どの大学が良いのかわからない」という人は、四谷学院の相談会に参加してみませんか?
信頼できる受験のプロが、あなたの将来を一緒にイメージし、解決策を見つけ出してくれますよ。
全国の校舎でお待ちしています!