10月7日に、2024年のノーベル生理学・医学賞の受賞者が発表されました。
今年は、ヴィクター・アンブロスさんとゲイリー・ラブカンさんの2人が受賞しています。
大学入試の面接において、ノーベル賞について質問されることがあるのを知っていますか?
何事も準備が肝心。予想外の質問をされて焦ってしまうことがないよう、自分の進む分野に関係ある賞については、一通り頭に入れておくと安心です。
今回は、特に聞かれることが多い医学部面接に向けて、ノーベル生理学・医学賞をまとめていきます。
目次
そもそもノーベル賞とは?
ダイナマイトの発明で知られる、スウェーデンの化学者アルフレッド・ノーベルの遺言から始まった、100年以上の歴史を持つ栄誉ある賞です。
受賞者にはメダルと1億円ほどの賞金が贈られ、かつては故人も表彰の対象でしたが、1974年以降は存命の人間のみとなっています。
ノーベルは破壊力のあるダイナマイトが戦争の抑止力になると考えていましたが、結果的には戦争の激化を加速させてしまい、「死の商人」と称されることもありました。
意図せぬ形で評価を下げてしまったために死後の評価が気にかかってしまい、遺言という形で未来の発明家や研究者たちのためにノーベル賞を設立した、というわけです。
元々遺言にあるのは「物理学」「化学」「生理学・医学」「文学」「平和」の5分野でしたが、1968年に「経済学」賞が設立されました。
後発の「経済学」については、正式にはノーベル賞としては認められておらず、「アルフレッド・ノーベル記念 スウェーデン国立銀行賞」と称されています。
面接によく出てくる話題は?
日本人が受賞した年は、特によく質問されます。『○○さんがノーベル賞を受賞しましたが、知っていますか?』という形式が多いでしょう。
もちろん「知っています」という確認や、「すごいと思います」という単純な感想を求められているのではありません。
聞かれることの多い『最近気になったニュースはありますか?』という質問と同様、その事例を知って、「自分の考え方がどう変わったか」「何を初めて認識することができたのか」ということを聞きたいのです。
焦らず返答するには、事前に準備して内容を把握しておく必要があります。
日本人の受賞者や、自分が進学する分野に関連する内容については、必ず確認しておきましょう。
ノーベル生理学・医学賞をおさえておこう!
医学部の面接において、最も話題に挙がりやすいのは、生理学・医学賞です。
ただし、同じ自然科学分野である「物理学」「化学」との線引きは曖昧であるため、研究内容によっては他部門の方が進路に近いこともあるでしょう。
今年の受賞者
2024年 ヴィクター・アンブロス(アメリカ) & ゲイリー・ラブカン(アメリカ)
2人は、「マイクロRNA(miRNA)」という分子が遺伝子の働きを制御していることを明らかにした功績が称えられ、受賞を果たしました。
従来は「転写因子」と呼ばれるタンパク質のみがその役割をしている…と考えられていましたが、マイクロRNAと転写因子の組み合わせであることがわかったのです。
マイクロRNAは人工的につくりあげることができるため、以前よりも目的に合わせた実験を行いやすくなりました。
この発見は、生物や生命科学の分野が発展するための大きな一歩だったということがわかるでしょう。
研究においては、地球上で最も繁栄している動物とも言われる、「線虫」という体長1ミリほどの生物が活用されました。
アンブロスさんは、1993年の時点で線虫の遺伝子からマイクロRNAを発見していましたが、当初は人間には当てはまるものではないと考えられていました。
しかし、2000年にラブカンさんらが動物界全体の遺伝子にもマイクロRNAが存在することを突き止め、以降の研究が大きく発展していったのです。
また、昨年のmRNAワクチンに引き続き、2年連続でRNAに関する内容がノーベル賞を受賞しています。
注目されている分野だからこそ、面接においても話題に挙がる可能性は高いと考えられるでしょう。
近年の受賞者
近年の受賞者を簡潔にまとめます。気になる研究については、さらに調べてみましょう。
2023年 カリコー・カタリン(ハンガリー/アメリカ) & ドリュー・ワイスマン(アメリカ)
2人は、新型コロナウイルスにおける「mRNAワクチン」の開発に貢献した点が評価され、受賞となりました。
mRNAとは、メッセンジャーRNA(リボ核酸)のことで、タンパク質の設計図とも言える役割を果たします。
このmRNAワクチンの最大の長所は、これまでのワクチンと比較して、極めて短期間で開発できる点です。
従来は投与するウイルスやタンパク質を準備するのに、非常に時間がかかりました。ワクチンの完成まで10年以上かかることも珍しくありません。
2人が直接コロナウイルスのワクチン開発を行ったというわけではありませんが、大規模な感染症に対するワクチンの開発において、迅速かつ柔軟に対応できるような土台を完成させていたことが、今回の受賞理由だと言えます。
2022年 スバンテ・ペーボ(スウェーデン)
スウェーデン出身の生物学者であるスバンテ・ペーボさんは、絶滅した生物の遺伝子を研究する「古ゲノム学」という新しい学問分野を開拓しました。絶滅したデニソワ人を発見するなど、人類の進化過程を研究する上で大きな貢献を果たしたとして、表彰されています。
人類の起源を調べることで病気への耐性などを解明し、昨今の新型コロナウイルスの重症化リスクに関係する研究も行っている点が、医学への功績としても評価され受賞につながったのでしょう。
ドイツの研究所に在籍していますが、2020年からは沖縄科学技術大学院大学の客員教授を務めており、2016年に慶應医学賞、2020年には日本国際賞を受賞しています。
2021年 デヴィット・ジュリアス(アメリカ) & アーデム・パタプティアン(アメリカ/レバノン)
視覚や聴覚とは異なり、「辛さ」や「熱さ」「痛み」などを感じ取るセンサーについては、長らくその仕組みが謎に包まれていました。
2人はそのセンサーを発見・研究し、中でも痛みを感じる「カプサイシン受容体」の発見は、今後の病気の研究や鎮痛薬などの開発につながるとして、医学分野での受賞を果たしています。
2020年 ハーベイ・オルター(アメリカ) & マイケル・ホートン(イギリス) & チャールズ・ライス(アメリカ)
ウイルス学の研究者である3人は、「C型肝炎ウイルスの発見」により、多くの慢性肝炎の原因を明らかにしました。
そこから今までできなかった検査を可能にしたり、治療薬の開発につなげたりという功績が認められ、表彰されています。
C型肝炎は30歳以上の日本人100人に1~3人が感染しているとされる「21世紀の国民病」とも呼ばれる病気です。自覚症状を感じにくい肝臓ということもあり、感染に気づかずそのまま肝硬変や肝がんへと進行してしまうことも珍しくありません。
血液を介して感染するこのウイルスですが、輸血の際などに検査ができるようになったことで、感染のリスクも減少し、適切な時期に治療を受けることで95%以上の人が体内からウイルスを除去できるようになりました。
日本人受賞者
日本人の受賞者について聞かれることも少なくありません。受賞当時から現在までに、その研究がどう発展したのかを調べてみるのも面白いですよ。
2018年 本庶 佑(日本) & ジェームズ・P・アリソン(アメリカ)
日本人の受賞者で最も記憶に新しいのが、京都大学名誉教授の本庶 佑(ほんじょ たすく)さんです。
本庶さんは免疫について長年研究を行い、がん細胞がどのように人間の免疫を逃れているのかを解明し、それまでの薬とは全く違う、新しいがん治療薬となる「オプジーボ」の開発に成功しました。
オプジーボは皮膚がんや肺がんの治療薬として世界中の医療現場で使用されており、従来は治療が難しいとされてきた患者にも効果が確認できています。
受賞時のコメントでは、『助成される研究費(科研費)を少しずつ増やして研究者の支援をしてほしい』と話しており、「世界に貢献する研究者の養成」を助ける環境づくりを求めたのも、印象に残っている人が多いのではないでしょうか。
2016年 大隅 良典(日本)
東京工業大学栄誉教授の大隅 良典(おおすみ よしのり)さんは、「オートファジー」の研究により受賞しています。
オートファジーとは、細胞が自分の中にある不要なタンパク質を分解し、それを「新しいタンパク質を生成するエネルギー」として使う仕組みで、「自食」とも訳されます。
体が飢餓状態になるとこのオートファジーが活発化され、古くなったタンパク質を新しく作り変える、いわばリサイクルのようなものと言えるでしょうか。
「オートファジーダイエット」という言葉で聞いたことがあるかもしれません。
オートファジーの仕組みを理解できたことで、アルツハイマー病などの神経に関する病気や、がんなどの治療法の開発につながるのではないかと期待され、研究が続いています。
2015年 大村 智(日本) & ウィリアム・C・キャンベル(アイルランド/アメリカ) & 屠 呦呦(中国)
北里大学特別栄誉教授の大村 智(おおむら さとし)さんが、寄生虫感染症の治療薬「イベルメクチン」を開発した功績で受賞しました。
静岡県で発見した新たな細菌を基に研究を進め、アメリカの製薬会社と改良を続けた結果、熱帯の寄生虫による感染症の治療薬になりました。アフリカや中南米で使用され、複数の感染症を根絶させる目前まで近づけており、多大な貢献を果たしています。
2012年 山中 伸弥(日本) & ジョン・ガードン(イギリス)
今から約10年前、京都大学教授の山中 伸弥(やまなか しんや)さんが、「iPS細胞」の開発により受賞しました。
1987年の利根川 進(とねがわ すすむ)さん以来、日本人では25年ぶりの生理学・医学賞受賞だったこともあり、日本人受賞者として真っ先に名前が挙がる人も多いでしょう。
iPS細胞とは「induced pluripotent stem cell」の略で、日本語では「人工多能性幹細胞」と呼びます。
inducedが人工(的)、pluripotentが多能性、stem cellで幹細胞ですね。
人間の皮膚や血液などの細胞を、因子(遺伝子)を導入した上で培養することによって、様々な組織や臓器の細胞へと成長できる万能な細胞を作ることに成功した…と言えば、以後の再生医療においてどれほど重要な発見だったかがわかるのではないでしょうか。
現在も研究段階の分野ではありますが、実用化の前段階である臨床試験まで進んでおり、医療現場への導入が近づいてきています。
今では当たり前に受けることができる治療法も、最初の大発見とそれ以降に続く多数の研究によって成り立っていると考えると、研究医や科学者の偉大さがよくわかりますね。
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