こんにちは。四谷学院英語担当、山岡です。
この記事では、「東大の英語ってどんな特徴がある?」「東大を攻略するにはどんな力が必要なのだろう?」といった疑問を抱えている方に向けて、東大英語の概要と難しさ、そして問題を攻略するためにやっておきたいことについて紹介していきます。
東大を志望される方はぜひ勉強の参考にしてみてください。
目次
東京大学「英語」試験とは
東大英語の試験時間や形式は、毎年安定しています。
試験時間
リスニング試験30分を含む120分です。
解答形式
記述が中心ですが、選択式問題も出題されます。
問題構成
問題構成としては、読解問題が大問3つ、英作文が1つ、リスニングが1つで、合計大問5題出題されていますが、読解問題では大問3つ中2つがA問題、B問題と分かれており、読解問題は合計5つの英文を読むことになります。また英作文でも問題が2つに分かれており、1つは自由英作文、もう1つは和文英訳の問題です。リスニングでも3つのパートに分かれており、大問数以上の英文を読み、書き、聞くことになっています。
・英作文 … 自由英作文・和文英訳に分かれている。
・リスニング … 3つのパートに分かれている。
東大「英語」の特徴
バリエーション豊かな問題
東大の英語では、実にバリエーション豊かな問題が出題されていますね。文字だけでもその豊富さを感じることができますが、まだ過去問を見ていない人はぜひ実際に確認してみましょう。
(A) 文章を読み、その内容を約70~80字の日本語で要約する問題
(B) 文章を読み、空所に適切な英文を埋める問題・整序問題
大問2 英作文
(A) 自由英作文。与えられたテーマに対し約60~80語の英語で意見を述べる問題
(B) 和文英訳。日本文を読み、下線部を正しく英訳する問題
大問3 リスニング
(A)~(C) あるテーマについての講義や記事内容、ラジオ番組などを聞いて、設問に対して正しいものを選択する問題
大問4 読解
(A) 正誤問題。各段落内の5ヵ所の下線部から修正が必要なものを選択する問題
(B) 英文和訳。文章中にある3ヵ所の下線部を正しく和訳する問題
大問5 読解
長文総合問題。基本的には空所補充、内容説明、語句整序、内容合致問題が出題されている
語彙は標準レベル
大学入試最難関の東京大学。「東大だし、英文に出てくる英単語のレベルも相当高いのでは…?」「自分が聞いたこともない知識が問われたりするのかな…?」と思っている人も多いのではないでしょうか。
実は全くそんなことはありません!
語彙は軒並み標準レベルです。意味を知っている人が少ないような高レベルの単語については、問題の最後にしっかりと「注」が載せられているのが、東大英語の特徴の1つです。例えば2023年度入試では“linguistic”のような入試必須レベルの単語に「注」がついていたこともあります。
このように東大英語で出てくる単語は大学受験に必須レベルのものが中心であるため、難しい単語ばかり覚えようとするのではなく、まずは受験に不可欠な語彙力を漏れなくしっかり身につけておくことが重要だといえるでしょう。「聞いたこともない、知っている人が少ない知識を求められる」こともほとんどありません。
東大「英語」の問題例
(2023年度入試 大問4(A)より一部抜粋)(24) There are many different English lingua franca contexts in the world, (a)but they are all marked by various levels of competencies in the language among speakers. Language ideological frameworks position one variety, most commonly the ‘Standard’, as superior and dominant. The coexistence of such a Standard English alongside non-Standard and lingua franca forms (b)create complex power dynamics which are often racialized. We would be ignoring reality if an analysis of English lingua franca contexts (c)were to exclude interactions where monolingual native speakers interact with bilinguals and poor English speakers. My own conceptualization of lingua franca interaction (d)is, to some extent, a type of communication characterized by much sociolinguistic variation (e)which serves as the platform of interaction by a group of English speakers with diverse levels of competencies.
この段落内に5ヵ所の下線部が存在します。そのうち1つは修正する必要がありますが、それはどれかわかりますか?
正解は(b)です。
この文の主語が何かをよく見てみましょう。下線部前の“The coexistence of such a Standard English alongside non-Standard and lingua franca forms”が大きな主語のかたまりですが、そのうち“of such a Standard … lingua franca forms”は“The coexistence”を修飾する部分のため、動詞“create”に対応する主語は“The coexistence”です。とすると主語は三人称単数ですから、動詞は“create”ではなく“creates”と三単現のsを付け加える必要があります。「createは、ここではcreatesでなければならない」と気づけるのは、英文の構造を正確に捉え、内容を正しく読み取ることができるからですが、この問題で最終的に正誤を判定するために必要な知識は、あくまで中学校で学習する「三単現のs」なのです。言語を正しく運用する「基礎」を東大が重視していることがうかがえますね。
このように基礎的な事項が直接問題で問われることもありますし、そもそも読解で出題される英文も、標準的な文法や語彙、構文で構成されているものが中心です。そのため、「東大だからみんなが知らないような知識をたくさん覚えなければ!」という考え方をする必要はありません。目の前の基礎にしっかり向き合って、まずは文法・構文・語彙を抜かりなく身につけて、何が聞かれても答えられる引き出しをもちましょう。
それでも東大英語は難しい!?
ここまで…「東大英語の語彙レベルは標準的で、重箱の隅をつつくような細かい知識が求められることもない」ということを実際の問題を使いながら紹介してきました。それでも東大はやはり最難関校ですから、当然簡単にすらすらと解けるものではありません。
では、一体どんな要素が東大英語を難しくさせているのでしょうか。ここでは3点紹介します。
①英文の内容が高度である
東大の問題では非常に複雑な構造を持つ英文や、誰も知らないような文法・語彙を含む英文は目にしません。それどころか、実は、東大は受験生が読みやすくなるように問題の元となる英文を書き換えていることもあります。にもかかわらず、東大で出題される英文の内容を理解するのは容易ではありません。
それは、英文で述べられている内容そのものが高度であるからです。
東大入試に出てくる英文は、学問の本質に迫る著作から最先端の研究に関する論文、現代社会特有の問題に対する考察、さらには人の心の機微を深く味わう物語まで、いずれも読み手がその内容を受け止めるだけの高い知的レベルに達していることが求められるものばかりです。これらの英文を読みこなすために必要な学習は、「英語の読み方を学んで、たくさん読めば良い」といった単純なものではありません。普段から様々な事柄に興味を持ち、主体的に調べ、自分自身の考えを組み立てるといった、学習に向かう本質的な姿勢が東大では問われているのです。
このような学習を積み重ねることで、自分の中に確かな「学力」が少しずつ醸成されていきます。東大を志望する方は、英語の学習を「英語を読むために必要なこと」という狭い枠組みで捉えるのではなく、全方位的な「学力」を身につけるつもりで日々の学習に取り組んでほしいと思います。
②高い論理的思考力が求められる
学習に向かう本質的な姿勢に加え、東大英語を攻略するのに欠かせないのが、強靭な論理的思考力です。
語彙・文法・構文などの英語としての知識が身についていることは当然のことであり、そのうえで論理的思考力が求められています。
例えば大問1のA問題は、約300~400語の英文を読みその内容を要約する問題ですが、ただ英文を速く読んで理解しただけでは足りず、
・その英文で1番言いたいことは何か
・その主張に至るまでに本文がどのような展開の仕方で進んでいるのか
・どの情報を選択し、他の情報とどのような形でまとめれば、情報の過不足なく要約ができるのか
を考え、それを制限された字数の日本語で表現する必要があります。
試験時間を考えると、1問にかけられる時間が限られていることは明白であるため、瞬時に必要な情報を判断していくことが欠かせません。これは要約だけではなく和訳や内容説明、もちろん英作文に対しても同じです。与えられた文章をただ目で追うだけではなく、その内容は一体どのような展開の仕方になっているのかを把握したうえで、日本語や英語で正しく表現するにはどのように文を組み立てればよいかを考える。この力は決して短時間で身につくものではありません。
③多彩な出題形式と試験時間
東大ほど、バラエティが豊かな問題を出す大学は他にありません。出題形式が異なれば、それぞれの問題に解答するために必要な頭の使い方も異なりますので、脳にも相当な負担がかかります。
加えて、東大は時間制限が非常に厳しい大学でもあります。試験時間は全てで120分、内リスニングが30分で実施されるため、残りの90分で読解と英作文の問題を解くことになります。大問4つで割ると大問1つで約20分、ただし先ほど紹介した通り、A/B問題と2つに分かれている大問があるため1つの問題にかけられる時間は実質10~15分ということになります。この時間内で、英文を読み要約・和訳・内容説明などの記述問題を含む問題を解いたり、英作文を書いたりするとなると、かなり時間に余裕がないことがわかりますよね。とにかく時間との戦いです。当然、考え込んでいる時間はありません。
それぞれの英文を最適な読み方で速く読む力が必要であることはもちろん、問題で何が求められているかを瞬時に判断し、必要な情報を素早く取捨選択する必要があります。
時間制限と関連して、もう1点注意すべきことがあります。東大の試験は2日間(理科三類のみ3日目に面接あり)で行われますが、文系・理系ともに英語の試験は2日目の最終時限です。ここまで100分を超える試験を3科目受け、心身共に疲れ切っている状態で英語の試験を受けることになります。問題形式が多様・分量が多い・1題にかけられる時間が短いことに加え、身体的にも苦しい条件下で受けなければならないということもまた、難易度を高めている1つの要因と言えます。
東大「英語」の攻略法
さて、どのような要素が東大英語を難しくさせているのかがわかったら、今度は「ではどうすればよいのか」というところを知る必要がありますね。ここからは、東大英語の攻略に向けて何をするべきかを紹介していきます。
①抜け漏れのない正確な英語力を身につけ、知識を実際に運用しよう
英文を速く読むことも、論理的思考力を使って問題を解くことも、全ては確実な英語の知識が身についているところから始まります。逆にどんなに高いレベルの論理的思考力があっても、英語の知識なしでは太刀打ちできませんし、英文を速く正確に読むこともできません。全てにおいて根本的な底力となる語彙・文法・構文の力は早めに自分のものにして、まずは大問4(B)の和訳問題や大問5の読解問題をしっかり得点できる状態を作りましょう。
ただし、「知識が身についているだけ」では東大英語を攻略することはできません。東大が受験生に「知識の量」を求めていないことは問題を見れば明らかです。大学入試で一般的な「下線部の単語と同じ意味を持つ単語を選びなさい」といった単純に知識の量に左右されるような問題は、東大入試で目にすることはほとんどありません。そうではなく、東大の問題では身につけた知識を出発点としてどのように筋道立てて考えれば正解にたどり着けるのか、つまり「知識の運用力」が試されます。
東大の英語に対応するためには、闇雲に知識を増やそうとするのではなく、文法・構文・語彙の基礎を抜かりなく身につけた上で、その知識を使いこなすための学習が必要なのだということを理解しましょう。
②論理的思考力、表現力を身につけよう
では、身につけた知識を正しく運用するにはどのような力が必要なのか。それは、まさに<それでも東大英語は難しい!?>の②で紹介した高度な論理的思考力です。実際に東京大学の入学者募集要項を見ると、「東大が受験生に身につけてほしいこと」の外国語の欄にも
「…本学で学ぼうとする皆さんは、高等学校までの教育課程の範囲内で、それぞれの言語によるコミュニケーションに必要とされる理解力と表現力を備えていることが期待されますので、その言語についての正確な知識に裏打ちされた論理的な思考力の養成に努めてください。…(令和6年度東京大学入学者募集要項より抜粋)」
と記載がある通りです。東大を志望する生徒が論理的思考力を得なければならないことは明確ですね。
論理的思考力とは、物事を論理で、つまり根拠と結論がどのような筋道で成り立っているのかという視点で考える力のことです。この力を身につけるのにはかなりの時間がかかるため、普段の学習から意識して取り組んでいく必要があります。
読解問題で言うと、論説文であれば1番の主張とそこまでの展開方法、つまり1番言いたいことをどのような筋道を立てて導いているのか、また段落ごとで論じているテーマは何かを意識して読みます。主に大問5に多い物語や随筆であれば、主人公がどのような状況に居るのか・他の人物とどのような関係にあるのかといった状況を把握し、そのような状況や主人公の発言・他の人物とのやり取りから、主人公がどのような心情にあるかを論理的に推論し判断する意識をもって英文を読みましょう。
英作文も同じで、和文英訳の問題ではまず日本文がどのような流れになっているか把握し、下線部内にある指示語が何を指しているのか、また和文で使われている言葉から書き手がどのようなことを伝えたいのか(例えば、心から思っていることなのか、皮肉なのかなど)を考える必要がありますね。
そして、読解問題でも英作文でも、そのような意識で読んだうえで、自分で正しく解答を作成する際の表現力が必要です。
ここで大事なのが、頭の中で考えるだけではなく、手を動かして考えを書くことです。頭では分かっているのにいざ文字にしようとすると、思った以上に難しいということに気づきます。何度も書いて練習を重ねることで経験値があがり、書くコツをつかむことができるため、自分で表現する力も当然高まります。そして自分で書いたものは英語の講師に添削してもらいましょう。自分の知らない、気づかなかった知識や技術を身につける良い機会です。自分の答案をさらに良いものにするために、学校でも塾でも「講師に見てもらう」機会を積極的に作りましょう。
③解答時間を意識して、英文を正確に速く読もう
知識を身につけ、論理的思考力をもって正しい答えに導くことができるようになれば、かなり大きなステップアップです。あとはその力を限られた解答時間内で発揮できるようにしましょう。これは東大英語に限った話ではありませんが、英文を速く読めるようになる(=速読)ためには、英文を正しく読めていること(=精読)が前提条件です。
「精読」ができることで、実は速読をするスピードも自ずと上がってくるものです。つまり、あなたが確実な知識を正しく運用して論理的思考力を用いて英文を読むことができれば、その練習を重ねるにつれて読むスピードも自ずと上がるということになります。そのため、まだ1文1文を正しく理解できていない状態にいるのであれば、まずは精読を優先して英文を正しく読む力をいち早く身につけましょう。
そこを乗り越えたら次は「速読」です。自ずとスピードが上がっていくとはいえ、解答時間を普段からしっかり意識することは重要ですから、練習段階から時間を計り、解答時間内に問題を解ききる練習をしましょう。くれぐれも正しく読めてない時期から速読を優先させないよう注意です。正しく読めていない状態で速く読んでも得点は上がらない一方でやる気が失われてしまうため、段階を踏んで練習をしましょう。
④問題を解く順番を考えよう
試験を解くのに必ず最初の問題から解かなければならないというルールはありません。過去問を使って練習をしていると、自分の得意とする問題、本番で確実に得点したい問題や、速く解ける問題、力を入れて解くべき問題がわかってくると思います。そういった解ける問題を先に解いてしまうという手は作戦として大いにありです。
試験開始後、45分経過した頃からリスニングの試験が始まります。そこまでの45分間でどの問題を先に解いておくか、他の問題はどの順番で解くかを事前に考えて作戦立てておくことはとても重要です。1つの問題にどれだけの時間をかけるべきかの時間配分も、事前にしっかり考えておきましょう。
東大のその他の科目 傾向と分析
東京大学の入試の科目ごと、学部ごとの入試対策について、詳しい記事がありますので、ぜひご覧ください。
東大の英語 入試対策 学部別の特徴と難易度を解説!(この記事です)
⇒ 東京大学の日本史対策!東大に合格するためにつかむべき日本史入試問題の特徴
まとめ
今回は東大英語の概要と難しさ、そして問題を攻略するためにやっておきたいことを紹介してきました。英語力はもちろん、論理的思考力や判断力、表現力など、様々な力が必要であり、それらの力を身につけるには長期的な訓練が必要だとお分かりいただけたと思います。試験当日にしっかり得点できる力をつけるために、早めに対策を重ねましょう。
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