【京大の英語】読解対策~京都大学入試の傾向と対策

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こんにちは。四谷学院英語担当、山岡です。

京大英語を攻略するためには思考力と表現力を最高レベルまでもっていく必要があります。その読解問題の攻略に欠かせないのが和訳の徹底練習です。

そこで今回は、京都大学を志望している方に向けて、京大英語の読解問題を攻略するために身につけるべき力について紹介し、後半では、実際に入試で出題された問題を使いながらその重要性を確かめていきます。

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京大英語 読解問題の傾向と特性

まずは試験時間や問題形式など、京大英語の全体像を確認しておきましょう。

①問題構成:近年は、読解+英作文の構成で大問3~4題出題
②解答形式:記述式(一部の年度で選択式の問題あり)
③試験時間:120分

京大英語は例年、読解+英作文の組み合わせで出題されています。
読解で取り上げられる英文は論説文が中心で、哲学・環境問題・情報など様々な分野から出題されています。とても高度な内容で抽象度も高いことが特徴の1つです。

基本的に下線部和訳+下線部の内容説明から成っており、至ってシンプルな問題構成です。年度によって空所補充が出題されることもあります。また本文はやや短~標準程度の長さなので、試験時間が120分であることを考えると、じっくり考えて解答を出すことは可能だと言えます。しかしそれゆえ、各設問で高度な知識・思考力・表現力を伴った解答が求められるため答案で実力の差がはっきり見えてしまうこともまた京大英語の特性です。

京大英語 読解問題で求められる力とは

京大英語の入試問題において出題される「下線部和訳」や「内容説明」には、高度な知識・思考力・表現力を伴った解答が求められます。そのためには出題された英文の意味を完璧に理解できていることが必須であるため、語彙や文法、さらに構文を把握する力を高いレベルで身につけておく必要があります。その上で高度な思考力を使って内容を理解し、自分の言葉で表現する力が京大英語では求められるのです。

では、これらの知識・力がどのように求められるのかを、実際に出題された入試問題を見てみましょう。

2022年度出題問題

An obvious lesson to draw from this turn of events is: be careful what you wish for. Atmospheric warming, ocean warming, ocean acidification, sea-level rise, deglaciation, desertification, eutrophication ― these are just some of the by-products of our species’s success.(b) Such is the pace of what is blandly labeled “global change” that there are only a handful of comparable examples in earth’s history, the most recent being the asteroid impact that ended the reign of the dinosaurs, sixty-six million years ago. Humans are producing no-analog climates, no-analog ecosystems, a whole no-analog future. At this point it might be prudent to scale back our commitments and reduce our impacts. But there are so many of us ― as of this writing nearly eight billion ― and we are stepped in so far, return seems impracticable.
(2022年度入試 大問1 一部抜粋)

この英文では“the Anthropocene(人新世/アントロポセン)”をテーマに取り上げており、人類が今までにないほどの傷跡を地球に残してしまっていることから、「人類の時代」という新しい地質学上の時代に入っているのではないかということを論じています。なおこの “the Anthropocene”という用語は早稲田大学の2021年度の入試問題でも取り上げられています。

今回は、文中の下線部(b)の和訳を一緒に見ていきます。

(b)Such is the pace of what is blandly labeled “global change” that there are only a handful of comparable examples in earth’s history, the most recent being the asteroid impact that ended the reign of the dinosaurs, sixty-six million years ago.

さっそく下線部に入る前に、それまでの流れを補足しておきます。
第1段落では現代において人類が地球にもたらす莫大な影響力についていくつかの具体例を挙げた上で、我々が今生きているのは「人類の時代」という新しい地質学上の時代なのだと論じています。そのため第2段落1文目の“this turn of events(この時代の転換)”というのは「人類の時代への転換」ということになります。これをふまえた上で下線部和訳に入りましょう。

Such is the pace of what is blandly labeled “global change” that

まずこれは重要構文ですが、S+is such that S’ V’「Sの程度は非常なものなので」のsuchが文頭に出たことで倒置したもの(Such+is S that S’ V’)だということは押さえておきましょう。「~の速度がすさまじいので」ということですね。

次に「~の」の部分(of what is blandly labeled “global change”)ですが、一旦blandlyを抜いて訳すと「『地球規模の変動』と呼ばれているものの」という意味になります。ここまでをあわせると「『地球規模の変動』と呼ばれている現象の速度はすさまじいので」となります。

そして “blandly”ですが、この単語は難しく意味を知っている受験生も少ないと思うので、「試験中に問題を解いていたら、知らない単語が出てきた」という想定で考えてみましょう。

まず、“blandly”はそのあとの“labeled”を修飾していることは分かります。つまり、『地球規模の変動』がどのようなニュアンスで「呼ばれているのか」を考える必要があります。

では、『地球規模の変動』とは具体的には何を指すのでしょうか。その答えは下線部直前の文にあります。

下線部直前に注目
An obvious lesson to draw from this turn of events is: be careful what you wish for. Atmospheric warming, ocean warming, ocean acidification, sea-level rise, deglaciation, desertification, eutrophication ― these are just some of the by-products of our species’s success.(b) Such is the pace of what is blandly labeled “global change” that there are only a handful of comparable examples in earth’s history, the most recent being the asteroid impact that ended the reign of the dinosaurs, sixty-six million years ago. (以下略)
(2022年度入試 大問1 一部抜粋)

「大気や海の温暖化、海の酸性化、海面上昇、退氷…」です。これらは現代の環境問題としてもよく取り上げられるように、地球にとって悪影響です。このような滅多に起こらないはずの変化が “― these are just some…”とあるように、次々と起こっている状況なのです。そんな状況であるのに呑気に「地球規模の変動」だと呼んでいいのでしょうか(当然よくない)。そういったところから“blandly”には否定的な意味がありそうだ、と予測をして和訳をします。「気安く『地球規模の変動』と呼ばれているもの」などと訳せるとよいでしょう。こういった下線部外の内容から単語の意味を推測するといった作業も京大英語では必要になります。

there are only a handful of comparable examples in earth’s history,

“comparable examples(匹敵する例)”は「何に」匹敵する例なのかを考えると、文脈より「地球規模の変動に匹敵する例」とわかります。「地球規模」は直前にでてきているので代名詞「これ」に変換して「地球の歴史上、これに匹敵する例はごくわずかしかない」と訳せます。

the most recent being the asteroid impact that ended the reign of the dinosaurs, sixty-six million years ago.

主語の異なる分詞構文です。“, the most recent being the asteroid…”の“being”がポイントです。基本的な構文ですが、気づけましたか?この分詞構文を一旦元の文に戻してみると
“… and the most recent was the asteroid impact…”となり、この部分全体を和訳すると「そして1番最近の例は恐竜の君臨に終わりをもたらした6600万年前の小惑星衝突である。」となります。

最後に和約をまとめる

これで全ての部分を和訳することができました。最後にまとめます。

下線部(b)の和訳
「『地球規模の変動』と気安い表現で呼ばれている現象の速度はすさまじいので、地球の歴史上これに匹敵する例はごくわずかしかなく、1番最近の例でも恐竜の君臨に終わりをもたらした6600万年前の小惑星衝突なのである。」

淡々と「地球規模の変動」なんて呼んでいる余裕のないほどに、現代では前例もないような地球環境への悪影響がいくつも生じてしまっているのだという緊急性がこの内容からわかります。

構造の理解・整理の重要性

今回取り上げた2022年度出題の下線部和訳では、Such + is S that S’V’や主語の異なる分詞構文などの重要構文がありました。重要構文が出てきたら絶対に見逃さないようにしましょう。また、主部が極端に長く動詞の位置が分かりにくい、接続対象が離れた場所にあるなどといった文構造が複雑な文も出てきます。1文がどのような構造になっているのかをしっかり理解・整理して確実に和訳に持っていくことがまずはマストです。

“blandly”の意味や“comparable examples”は「何に」匹敵する例なのかを下線部外や本文の全体の内容から推測し、和訳に補っていく必要がありました。このように京大英語では、文章全体の内容をしっかり把握した状態で下線部の内容を具体的にしたり、前後の文脈から単語の意味を推測して筆者が伝えたいことに沿うように訳したりすることが求められます。さらに文が長かったり、下線部からかなり離れた文章から推測する必要のある問題も出たりしたこともあります。

精読の重要性

京大英語の入試問題においては「下線部和訳」や「内容説明」の問題が出題されますが、内容説明をする力の「基本」も「下線部和訳」と同じく「構造の理解・整理」からスタートします。
まずは下線部の内容を理解した上で、文章全体の流れから下線部の内容をより具体的なものに肉付けする必要があったり、ほとんどの受験生が知らないような単語を前後の内容からどのような意味なのかを推測したり、さらに具体例を挙げながら説明したりと、解答パターンは様々です。「内容説明」も「下線部和訳」と同様で、話の内容を正しく読み取った上で必要な情報をまとめて解答を作成するわけなので、まさに「精読力」が読解の全ての基本になるのです。

京大英語 読解問題を攻略するために

京大英語の読解問題を対策する際には、下線部だけの読解はダメです。文章全体においてどういったことが言われているのかをしっかり理解する必要があり、そのために、精読する力を強化していかなければなりません。流し読みではなく、各文の構造を確実にとらえて「この文では何を言おうとしているのか」を理解することを意識しましょう。また指示語が何を指しているかに気をつけたり、段落ごとで「何をテーマにして」論じているかを意識して読んでみたり(段落ごとで要約をしてみるのもおすすめです)、その段落で「筆者はどのような意見・立場であるのか」を把握して文章を読んでみたりしましょう。

また、和訳をする際は、辞書通りの訳語にしないことを好ましいとするケースがあります。文脈から適切な訳語を見出すことが求められます。ただし、いわゆる「意訳」が「直訳」の内容から離れすぎてしまわないことを心に留めておきましょう。あくまで「直訳をした結果、ここが少し不自然に感じる・もう少し説明を加えた方がよさそうだ、と思った部分を本文の内容から推測し、より適切な語に訳す」ということです。「直訳」は大切なベースです。主語や動詞・修飾関係を丁寧に見て構文をしっかり理解する。そしてその文に忠実になって和訳することを意識しましょう。そして自分で和訳を書いてみたら、解答と見比べたり先生に見てもらったりして改善点を今後の自分の解答に取り入れていきましょう。

まとめ【京大の英語】読解対策~京都大学入試の傾向と対策

今回は京大英語の読解問題に求められる力と攻略に向けて身につけておくべき力を紹介しました。

①高度な知識・文法・構文力
②最高レベルの思考力をもって自らの言葉で説明できる表現力

これが京大英語で求められていることです。これらの力を身につけるためにも、精読力を強化させることが重要です。ぜひ実践してみましょう。

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