こんにちは、四谷学院の受験コンサルタントの田中です。
大学受験においては、地方会場での入試を行う私立大学が増えてきました。「地元以外の私立大学を受験したい」と考えている方にとっては、ぜひとも活用したい入試方法ですね。例えば東京に行かずとも同じ内容の試験が自宅近くで受けられるなどメリットも大きい地方での受験ですが、実はデメリットもあります。
地方入試の制度をしっかり理解して活用できるように、今回は、地方会場での受験についての注意点を解説していきます。
目次
地方会場がある私立大学
まずは、地方会場のある主要大学を見てみましょう。
関東の私立大学
関西の私立大学
地方入試のメリット
地方入試にはメリットがいくつもあります。順番に紹介していきます。
移動が楽
大学の本拠地(本学地)まで受験に行くとなると、新幹線や飛行機を使って移動しなければならないというケースも珍しくありません。自宅から近い試験会場で受験することができれば、移動が楽になり、受験生の体力的・精神的な負担の軽減が期待できます。
交通費や現地での滞在費用の軽減
新幹線や飛行機などを使う場合には、交通費がかかります。また、試験当日に移動するのではなく、前日から泊まり込みで試験に臨む場合には宿泊費も必要となります。自宅や受験大学の場所にもよりますが、1回の受験で数万円かかります。地方受験の場合は、これらの費用が安く抑えられるので金銭的負担が軽くなるというメリットがあります。
気持ちが楽
特に寒い中の移動は精神的疲労もたまりますし、知らない街を訪れることで緊張感が嫌でも増します。食事一つとっても、いつもとは異なるものになるでしょう。体力的なものに加えて、精神的な疲れもあり、本来の実力を発揮するためにも、こうした負担は少しでも減らしたいものです。地方受験の場合には、慣れた環境で受験に臨むこともできるということも、大きなメリットとなるでしょう。
地方入試のデメリット
地方入試にはメリットがある反面、デメリットもあります。一つずつチェックしていきましょう。
受験方式が限られる
上の表の「方式」を見ていただくとお気づきかと思いますが、地方入試の場合には限られた受験方式しか設定されていません。
例えば、明治大学では「全学部統一日程」と「個別日程」がありますが、地方入試は「全学部統一日程」だけとなっています。
このように、東京の大学であれば、「個別日程は東京(本学地)でしかやらない。」「地方入試=全学部日程」という設定をしている大学は多いので、その場合には、「地方では個別日程で受験できない」ということになります。
「別に、全学部日程で受験して問題はないのでは?」と考える方も多いと思いますが、実は、「全学部日程」はそもそも受験者数が多く、その一方で合格者数が少ないため、受かりにくい方式と言わざるを得ません。
そのため、もしも本学地に行くことができる受験生は、「地方受験=全学部日程」だけでなく「個別日程」でも受験することを強くお勧めします。
私立大学には地方枠があるって噂は本当?
「北海道から必ず○人合格する」という地方枠がある、という話を聞いたことがある人はいませんか?これは単なる噂、いわゆる都市伝説です。そんな枠は残念ながらありません。地方受験・本学地受験、どちらが有利ということはありません。合格ボーダーを超えれば合格できるのが大学入試です。
自分の受験する大学の方式ごとの合格ボーダー(合格最低点)はしっかりチェックしておきましょう。
遠いほど有利になるって噂は本当?
同じ点数だったら、都内よりも地方在住者が優遇される…という噂はウソです。遠ければ遠いほど採点が有利…ということはありません。
むしろ、都内在住の場合、全学部方式も個別方式も、同じように出願・受験しやすいので、合格可能性は上がるといえるでしょう。地方受験の場合、全国の受験生たちが「統一日程」での限られた合格枠を目指して頑張るので、厳しい戦いになります。
逆に言えば、地方に住んでいる人が本学地まで出向き個別日程で受験するとなると、地方受験で全学部日程で受験するよりも合格しやすくなる、と言えます。そうした意味では、例えば北海道であれば「遠くても関東まで」というイメージする人も多いですが、学びたい学部や憧れる学風といった面から、関西の大学を受験するという選択肢も検討する価値はあるでしょう。
受験戦略を立てよう
同じ大学の同じ学部を受験する場合でも、方式を変えれば日程はもちろん、配点も異なる場合もあります。ですから、得意な科目の配点が高い方式を選ぶなど、自分に有利になる入試方式で受験すべきですから、しっかり情報を集めましょう。大学入試は「情報戦」の側面があります。間違った情報や古い情報はもちろんですが、場当たり的な対応や思い込みで受験に挑んでしまうと、せっかくの実力が大学入試に活かしきれません。正しく戦略を立てることで、あなたの実力が100%発揮できるわけです。
明治大学の事例
ここでは、明治大学の商学部と理工学部(情報科学科)の2023年度入試のデータを例にとって説明します。
まず、「全学部統一方式」の方が「学部別方式」よりも合格者数が少なく、また「全学部統一方式」の方が「学部別方式」よりも合格最低点が高い傾向が見られます。これはほとんどの学部・学科で言えることです。
さらに、共通テスト利用方式では、合格最低得点率が80%以上になっています。これは旧帝大合格レベルで非常に高い得点率です。
学部 | 方式 | 合格者 | 合格最低得点率 | 競争率 |
商学部 | 学部別 | 1513 | 68.0% | 4.9 |
英語4技能試験利用 | 1517 | 70.5% | 5.4 | |
全学部統一 | 348 | 69.3% | 5.1 | |
前期・共テ利用4科目 | 197 | 81.0% | 3.6 | |
前期・共テ利用5科目 | 132 | 80.0% | 3.1 | |
前期・共テ利用6科目 | 293 | 79.0% | 2.9 | |
後期・共テ利用 | 32 | – | 3.0 |
学部 | 方式 | 合格者 | 合格最低得点率 | 競争率 |
理工学部情報科学科 | 学部別 | 374 | 71.9% | 4.7 |
全学部統一 | 107 | 71.0% | 5.5 | |
前期・共テ利用3科目 | 290 | 85.0% | 3.1 | |
前期・共テ利用4科目 | 182 | 82.0% | 3.3 | |
後期・共テ利用 | 8 | – | 7.1 |
※共通テスト形式の合格最低得点率は、河合塾Kei-Net大学検索システム「ボーダー得点率」を記載しています。
地元最強論に注意
地方の高校においては、地元の国立大学に行くことがベストで、地元を離れて有名私立大学を目指そうとすると反対されるということがあります。そのため、地元以外の私立大学を受験する場合には「共通テスト利用方式」や「地方入試」しか利用できない、というケースも耳にします。全科目をまんべんなく勉強するために学習時間が足りなかったり、なかなか得意科目を伸ばすことができなかったりします。
受験生は日本全国にいます。そして、地元だけでなく全国で受験に臨んでいます。例えば、九州大学入学者の地元占有率(九州ブロック)は75%を超えますが(九州大学IR室資料より)、23年度の北海道大学入学者の道内出身者の割合は30.8%で、7割は全国からです。(日経新聞より)
受験大学の情報を集める際には、併願校も含めて「全国の受験生はどんなことを考えているのか?」「東京や大阪など、大学が近くにたくさんある地域の受験生は、どんな風に受験戦略を立てているのか?」ということを知っておくことも大切なことと言えるでしょう。
【参考記事】
地元以外で受験する際の注意点
地元以外で受験する際には、いくつか注意しておくべきポイントがあります。
前日入りもしくは前々日入り
ホテルをとる場合には、大学や試験会場の近くは満室になってしまうこともあります。早めに受験スケジュールを立てておきましょう。大学受験会場は、大学校舎でない場合もありますので、必ず受験票などを確認しましょう。
なお、受験会場の下見は必須です。必ず前日には現地に入り、交通経路を確認しておきましょう。ただし、北海道をはじめとする雪が降る地域が受験会場である皆さんは「前々日入りが基本」と考えましょう。ご存じの通り、冬期の移動は大変です。飛行機と電車は止まるものという意識をもって、早め早めに行動してください。
四谷学院札幌校・先輩の体験談まとめ「私立大学の地方入試は不利?!地方会場で受験する場合の注意点」
今回は私立大学の地方入試についてみてきました。
地元では常識だと思っていたことでも、全国的に見たらそうではなかったり、あるいはその逆だったりすることもあります。高校でしか進路指導を受けていなかったり、地位密着型の塾・予備校に通っている場合には、視野が狭くなり、偏った情報しか入手できない恐れもあります。今一度あなたの受験戦略を見直してみるとよいでしょう。