こんにちは!四谷学院 受験コンサルタントチームの伊達です。
志望校についての相談を受ける中で、入試が近づいて弱気になっている受験生やその保護者からこんな声を聞くことがあります。
『編入学や転入学(以下、編入・転入)で、進学後にほかの大学へ入り直す学生がいることを知りました。浪人してもう1年やるよりもリスクが少ないと思うんですが、どうでしょうか?』
浪人生は、立場上「学生」でも「社会人」でもありません。どこにも所属せず、ひたすら勉強だけに励む1年は心身ともに負担がかかることでしょう。
また、もう一度受験勉強をがんばったとして、志望校に100%合格できるとは限りません。
そう考えると、第二志望以下の大学に進学しておいて、卒業に必要な単位の一部を取りながら、本命だった大学への編入や転入を目指す…というのは、確かにリスクが軽減されているようにも見えます。
しかし、メリットしかないのであれば、第一志望に合格できなかった大学生はほぼ全員が活用するはずですが、実際はそうではありません。
今回は編入や転入のメリット・デメリットについて確認し、自分が活用すべき制度なのかを詳しく見ていきましょう。
編入学と転入学の違いは?
「違う大学に入り直せる制度」として、よく同じようなものと考えられている編入と転入ですが、実際は言葉の定義がやや異なります。
ただし、大学ごとに制度の詳細は少しずつ異なり、ひとまとめに「編入学」と表現している大学が大多数です。
以下で単語としての定義を確認していますが、出願条件などの詳細については、自分が検討している大学の実施要項を必ず参照してください。
編入学の定義
編入は、大学や短大、専門学校などをすでに「卒業」している人を対象とした、途中の年次から入学できる制度です。
ただし、募集する対象者や学部は大学ごとに異なります。すべての大学や学部で募集している訳ではないので、注意しましょう。
たとえば早稲田大学では、4年制大学を卒業済の人が対象となる「学士入学試験」と、短大や高専の卒業者を対象とした「3年編入学試験」を実施しています。
合格者はいずれも3年次の課程から単位を取得することとなり、最短2年で卒業可能です。
転入学の定義
転入は、大学「在学中」の人を対象とした、途中の年次から入学できる制度です。
ただし、前述した通り、区別せずに「編入学試験」と表現している大学がほとんどで、「○○大学 転入」というワードで検索してもヒットしない可能性があります。
たとえば亜細亜大学の編入学試験では、以下のように編入と転入いずれの対象者も受け入れられるようになっています。
2年次 編入試験…大学に1年以上在学し必要単位数を取得している人が対象
3年次 編入試験…大学に2年以上在学し必要単位数を取得している人
+短大や高専をすでに卒業している人が対象
「編入学試験」という名称であっても、大学在学中から受け入れている大学も多いため、募集要項を確認しましょう。
全体的には、3年次からの転入を受け入れている大学が多くなっています。
編入学や転入学は実際のところおすすめなのか
万が一志望校に届かなかった場合、浪人してもう1年がんばるのと、編入や転入を視野に入れて進学するのでは、実際どちらが良いのでしょうか。
編入と転入のメリット・デメリットを確認してみましょう。
編入学や転入学のメリット
① リスクヘッジができる
編入や転入を考える最も大きな理由は、「大学受験」につきまとうリスクを管理できる点でしょう。
受験に「絶対」はないので、浪人してもう1年がんばったからといって、第一志望に「100%」合格できるとは限りません。
勉強に費やした日々が無駄になることはなく、間違いなくあなたの成長につながっているはずではありますが、不合格という結果から『もったいない1年だった』と感じてしまう人がいるのもまた事実です。
その点、大学に進学し単位を取得していれば、編入で不合格となってしまった場合でも、切り替えてそのままストレートで卒業まで進むこともできます。
メンタルや平常心が重要な入試において、「後がない」という気持ちで臨んでしまうと実力を発揮し切れません。
不合格になってしまう可能性まで考慮すると、このリスク管理という点は受験生にとって大きなメリットだと言えるでしょう。
② 試験の科目数を絞れる
編入の選考に使われる試験科目数は、一般的な大学入試よりも少なくなります。
基本的に「外国語(英語)」「小論文(学部や学科の専攻内容含む)」「面接(口述試験)」であることが多く、国公立も私立も同様です。
一般入試と異なり、国公立を目指す場合でも5教科の共通テストを受ける必要がありません。
極端な苦手科目があり、総合点が下がっていた人にとっては、ありがたいことでしょう。
もちろん、その分求められるレベルは高く、英語や小論文の勉強だけでなく、口述試験の練習も行う必要があります。
③ 対策の時間を確保できる
編入・転入試験の実施時期は、大学によって異なります。
年間を通して分散していますが、特に多いのは、6~10月頃でしょうか。
実施している大学が多い「3年次 編入試験」を目指す場合、大学生になってからも約2年半の準備期間を確保できます。
一般入試のときは出遅れてしまったという反省がある人も、大学ごとの試験科目をあらかじめ確認し、次は後悔のないよう準備を進めておきましょう。
④ 進学した大学に満足する可能性がある
進学するタイミングでは編入を考えていた人も、実際に受験まで行く人はあまり多くありません。
それは、「大学に通ってみたらその環境で充分に満足できた」ということがよくあるからです。
第一志望でなくとも、併願校として考えるような大学であれば、自分の興味がある分野から大きく外れることはないでしょう。
高等教育を受けたり、サークルを気に入ったり、尊敬できる学友や教授がいたり…と、大学生活を豊かにしてくれる要素はいくつもあります。
実際に肌で感じてみないとわからないことは非常に多いです。
反対に、こだわって合格を勝ち取った大学が実は合わなかった…というケースもありますし、大学に何を求めるのかは明確にしておいた方が良いでしょう。
⑤ 国公立大学でも併願できる
通常は各期に1校しか受験できない国公立大学ですが、編入の場合は併願することも可能です。
金銭的に私立大学に通い続けるのが難しくなり、国公立大学へ編入して学習や研究を続ける人もいます。
ただ、年間の授業料だけでなく編入試験の受験料や入学金は必要なため、よく確認しておきましょう。
志望動機を複数考えることや、受験料などの点から、3~4校ほどを併願する受験者が多いようです。
編入学や転入学のデメリット
① 募集人数が多くない
編入や転入の募集定員は「若干名」と設定されていることが多く、人数が記載されている場合も、学科の定員が10名を超えることはほぼありません。
その限られた枠を、すでに一定の高等教育を履修し終えたライバルたちと争うのは、もちろん簡単ではないでしょう。
万が一に備えて、併願校を検討するか、そのまま在学できるよう卒業単位の一部を取得しておくか、は考えておく必要があります。
② 選択肢が限られる
すべての大学や学部が編入学試験を行っている訳ではないという点にも注意が必要です。
たとえば名古屋大学では、多くの学部で試験を実施していますが、理学部・農学部・医学部保健学科では行っていません。
ほぼすべての学部で実施する大学もあれば、すべて不可という大学もあり、学部によっては一般入試よりも選択肢が狭まってしまいます。
また、学外からの募集を行っていない大学もあるため、注意しましょう。
慶應義塾大学では、医療系3学部以外では編入試験を設定していますが、「学士入学」「第2学年編入」のいずれも、学内の他学部在籍(出身)者のみの募集となっています。
③ 受験からのブランクが生じる
「対策の時間を確保できる」というメリットを挙げましたが、人によってはデメリットになってしまいます。
特に、ほぼ必ず出題される「英語」の試験については、一般入試よりもかなり難しくなり、和訳や英訳など実践的な英語力が求められます。
大学でも英語の授業は必修であるものの、それ以外にもTOEIC対策の講義を受講するなど、日ごろから対策が必要です。
期間が長い分、今までは詰め込み型のような勉強をしていた人も、計画を立てて継続的に学んでいきましょう。
学習のモチベーションを保つには、短期間で集中して勉強する時期を設定するよりも、毎日少しずつがんばるのがおすすめです。
④ 時間が足りず対策が中途半端になりかねない
『大学生は自由な時間が多い』と言われることがあります。ただ、これは少し語弊のある言葉でしょう。
サークルで学生時代にしかできないことをやったり、アルバイトで将来のための費用を貯めたり、大学生は「自由に選択できる時間」は多いですが、時間が余っている訳ではないのです。
その大学生活において、周りの学生にプラスして「編入試験の対策」という時間が入ってくるのは、軽い負担とは言えないですよね。
また、最初から転入を強く意識しすぎるあまり、大事な大学生活の数年を有意義でないものにしてしまったという声を聞きます。
「どうせ転入して離れ離れになるから」と交友関係を広げず、ただ別の大学に行くための準備期間になってしまった…というケースです。
もちろん最終的に目標が達成できれば喜ばしいことですが、20歳前後の数年は非常に重要です。
進学後に後悔することがないよう、やはり大学受験(一般入試)で全力を尽くし、「行きたい大学」でのキャンパスライフを満喫できるようにしましょう。
再受験を考えた方が良い?
出願先や時期が限られている、試験内容が特殊で対策が難しいといった理由から、大学を中退して再受験を検討する人もいます。
進学先が合わない、不満を感じるタイミングは、最初の半年間が一番多く、夏休み頃から一般入試に向けて受験勉強を再開した…というケースをよく目にします。
一番のメリットは、すぐにほかの大学へ行くチャンスが生まれることでしょう。
よく悩んだ末に結論を出したとして、行きたい大学に再挑戦できるのは早くても1年半後…では、無駄な時間を過ごしてしまうことになります。
また、選択肢が多く、対策を考えやすいのも良い点です。
実際に大学入試を経験しているため、自分の適性に合った受験形式を選び、計画立てて対策することは難しくありません。
せっかく進学した大学を辞めてしまうのはもったいないと感じる人は多いでしょう。
ただ、自分の大事な時間を、もやもやした状態で過ごすのも非常にもったいないことです。
「このまま進級・卒業して良いのかな…」と迷いが生じたら、決断を下してしまう前に、ぜひ四谷学院の個別相談会で相談してくださいね。
編入学と転入学って何? まとめ
今回は、編入と転入について確認しました。
いずれも、大学や専門学校に進学した後から、自分が志望する大学に入り直すチャンスを得られる制度です。
募集人員は少ないですが、志望者数も年によって大きく異なるため、倍率を気にしすぎる必要はないでしょう。
進学後に視野が広がってやりたいことが変わったり、通ってみると満足できる環境でなかったり…というのは、珍しいことではありません。
自分が本当に行きたい大学、対策が充分にできる試験内容なのであれば、挑戦すべきでしょう。
一方、大学で過ごす4(6)年間は、社会人になってからではチャレンジできないことに挑める、時間や体力のある貴重な期間です。
まだ一般入試まで少しでも時間が残っている受験生なのであれば、まずは目の前の試験に全力を尽くすべきです。
四谷学院はあなたの志望校合格を全力でサポートします。一緒に夢のキャンパスライフへ向けて突き進みましょう!