自治医科大学は、栃木県下野市に本部を構える私立大学です。へき地等の医療確保・向上や、地域住民の福祉増進を目的として、1972年(昭和47年)に設立されました。全国の都道府県が共同で出資した学校法人により運営されています。医学部と看護学部を持ち、医学部では地域医療の確保といった設立の趣旨に基づき、各都道府県から2~3名(栃木県は5~6名)の学生を選抜するという、独特の入試方法が実施されます。
この記事では、自治医科大学の入試の特徴や難易度、偏差値、倍率、合格するための効率的な勉強方法をご紹介します。自治医科大学の受験を考えている方、勉強しているのに成績が伸び悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
※本記事に記載されている情報は2022年10月3日現在のものです。最新の情報は大学公式ホームページにて必ずご確認ください。
目次
自治医科大学の入試問題で問われる能力
初めに、自治医科大学が求めている人物像と、入試の難易度について解説します。
自治医科大学はどのような人材(学生)を望んでいるのか
自治医科大学では、建学の精神として、次のように掲げています。
●建学の精神 全国の都道府県が共同で設立した自治医科大学は、医療に恵まれない地域の医療を確保し、地域住民の保健・福祉の増進を図るため、医の倫理に徹し、かつ高度な臨床的実力を有し、更に進んで地域の医療・福祉に貢献する気概ある医師を養成するとともに、併せて、医学の進歩を図りひろく人類の福祉にも貢献することが建学の精神である。 |
引用:自治医科大学 建学の精神
冒頭でも述べたように、自治医科大学は地域医療の確保・向上などを目的に、全国の都道府県が出資して設立した大学なので、「建学の精神」に目指す方向性がすべて詰め込まれています。
このような自治医科大学でのアドミッション・ポリシーは、次のとおりです。ここでは、医学部についてご紹介します。
医学部【アドミッション・ポリシー(入学者受入れの方針)】 求める学生像 医師として社会に貢献する自覚をもち、地域医療に進んで取り組む気概のある、次のような人を求める。 適性 基本的学力 地域医療への意欲 |
全国の都道府県から選抜された医学部の学生は、6年間を寮生活で過ごすなかで自律協調の精神と責任感を涵養し、地域医療の認識と人道的医療への使命感を育み、卒業後は出身地へ戻り、地域医療に従事します。
なお、医学部では入学者全員に修学に必要な納付金を全額貸与し、卒業後に定められた期間、知事が指定する公立病院などに勤務した場合は、返還が免除されるシステムとなっています。
独特の修学情報については、自治医科大学概要2021-22(PDF)など最新の情報でご確認ください。
自治医科大学入試の特徴
自治医科大学で導入されている選抜方法はシンプルで、医学部では一般入学試験のみ。大学入学共通テストの受験は課せられていません。看護学部では一般入学試験に加え、学校推薦型選抜入試(指定校制)も実施されています。ここでは、学部ごとの一般入学試験の特徴を取り上げます。
- 医学部
医学部の入学試験は、まず各都道府県で第1次試験を行います。これはマークシート式の学力試験で及第点に達した人のみ、面接に進みます。第1次試験に合格した人は第2次試験(記述式の学力試験と面接)を受験します。
試験の内容と必要書類により、総合的に各都道府県から若干名ずつ合格となります。 - 看護学部
看護学部の入学試験は、第一次試験でマークシート方式の学力試験を行い、合格者のみ第二次試験の面接に進みます。面接は10分程度の個人面接です。試験結果と調査書により総合的に判断して、合否判定を行います。
自治医科大学入試の概要
ここからは、自治医科大学の入試概要を解説します。
出願資格について
自治医科大学の一般選抜での出願資格は、以下のとおりです。ここでは、医学部の学生募集要項より一部抜粋してご紹介します。
- 高等学校もしくは中等教育学校を卒業した者および入学年の3月に卒業見込みの者
- 通常の課程による12年の学校教育を修了した者および入学年の3月に修了見込みの者
- 外国において、学校教育における12年の課程を修了した者および入学年の3月31日までに修了見込みの者、またはこれに準ずる者で文部科学大臣の指定した者
参照:令和5(2023)年度自治医科大学 医学部入学者募集要項(PDF)
なお医学部では、出願時に「出願する都道府県の選択」をしなくてはなりません。これは、受験時の都道府県選択のみでなく、卒業後に一定期間勤務する都道府県にもなるので、ご注意ください。
試験科目や合格要件
ここからは、自治医科大学の試験科目や配点をご紹介します。
今回取り上げるのは、医学部一般入学試験の内容です。なお、以下のデータはすべて2022年10月3日現在のものです。
医学部 第1次試験(マークシート方式)
教科 | 科目・選択範囲 | 配点 |
数学 | 数Ⅰ・数Ⅱ・数Ⅲ・数A・数B(数列・ベクトル) | 25 |
理科 | 「物理基礎・物理」「化学基礎・化学」「生物基礎・生物」より2科目選択 | 50 |
外国語 | コミュニケーション英語Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・英語表現Ⅰ・Ⅱ | 25 |
面接(学力検査で及第者のみ、各都道府県で実施する) | ― | |
合計 | 100 |
医学部 第2次試験(記述式)
教科 | 科目・選択範囲 | 配点 |
数学 | 数Ⅰ・数Ⅱ・数Ⅲ・数A・数B(数列・ベクトル) | 12.5 |
外国語 | コミュニケーション英語Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・英語表現Ⅰ・Ⅱ | 12.5 |
面接 ※集団面接・個人面接を都道府県単位で実施する | ― | |
合計 | 25 |
出願者数や合格者数のデータ
自治医科大学(一般入試)の学部別出願者数や合格者数は、以下のとおりです。
医学部:2021年度(令和3年度)データ
募集人数 | 出願者数 | 受験者数 | 合格者数 | 実質倍率 |
100名 | 2,357 | 2,285 | 123 | 18.6 |
看護学部:2020年度(令和2年度)データ
募集人数 | 出願者数 | 合格者数 | 倍率 |
約65名 | 299 | 82 | 3.7 |
各科目の試験問題の特徴や難易度
自治医科大学の入試対策のために、試験問題の特徴や傾向をつかんでおきましょう。ここでは、自治医科大学医学部の一般入学試験(第1次試験)での試験問題の特徴を、科目を抜粋してご紹介します。
英語
自治医科大学の第1次試験の英語は、例年大問が3問で、すべて長文問題。試験時間は60分です。難易度は難問というほどではなく、平易な内容といわれているので、1問の解答に20分かけられると考え、落ち着いて解くことが大切です。
語彙力が求められる設問もあるので、語彙はしっかり勉強して実力を付けておきましょう。
数学
近年、大問の数が変動していますが、設問自体は25問で構成されており、試験時間は80分です。出題範囲からまんべんなく出題されており、難易度的には標準レベルで典型的な問題が出題されます。ただし1問あたり3分程度しかかけられないので、パッとみて解答の流れが浮かぶものからどんどん解いていくようにしてください。
対策としては、なるべく多めに過去問の演習を行い、時間配分や問題の取捨選択にも慣れるようにしていきます。
自治医科大学入試の難易度・偏差値
Benesseの大学受験・進学情報「マナビジョン」のデータでは、自治医科大学の入試の偏差値は61~81。学部別では、医学部81、看護学部61となっています。
自治医科大学に合格するための勉強方法
ここからは、自治医科大学に合格するための勉強方法をご紹介します。
自治医科大学に入るには、何をすればいい?
自治医科大学の入試は、特に医学部の場合は一般入学試験のみで、募集方法も都道府県単位で行うなど、特殊な方法を取り入れています。
ただ大学入学共通テストは取り入れておらず、第1次試験でも3教科受験なので、受験者はかなり絞り込んで勉強し、入試に臨むと考えられます。難問・奇問はなく、平易な設問ではあるものの、問題の数が多いことから、1つのミスが合否を分ける事態になりがちです。
基礎力を高めるのはもちろんのこと、どれだけミスなく解き切るかが問われます。
受験期の過ごし方
高校3年生という受験期をどのように過ごすかによって、合否の確率が上下するといっても過言ではありません。無計画に勉強するのではなく、年間を見通した長期的なスケジュールを立て、受験勉強に取り組んでください。
- 春(4~6月):徹底して基礎を身に付ける時期。教科書の内容をベースに丁寧に学習し、苦手分野の洗い出しをこの時期に進めておきます。暗記ものは単語集や用語集を使い、1日でも早く始めるのがおすすめ。
- 夏(7~9月):苦手分野を徹底して克服する時期。長期休暇中は、まとまった学習に取り組めます。ぜひこの時期に成績アップを狙いましょう。「一日に問題集を10ページ進める」など、短期スケジュールを組むのも、モチベーションを保つコツです。
- 秋(10~12月):大学入学共通テストの対策を始める時期。基礎固めをしつつ応用力も磨くことで、私大入試対策にもなります。
- 冬(1月~):過去問を集中的に学習し、繰り返し演習を積む時期。時間配分に気を付けながらミスなく問題を解くようにし、最後の仕上げをします。
予備校で勉強する場合
独学で受験勉強に取り組むケースもありますが、継続する意志と情報収集力がないと、かなり厳しい戦いになりがちです。だからといって「予備校にさえ通っていれば安心」とも言い切れないのをご存じでしょうか。
その理由は、予備校の集団授業スタイルにあります。大手予備校ともなれば、一度に多くの生徒が同じ授業を受けることも珍しくありません。講師の授業を受け身で聞いて、わかった気になっているだけの場合もあり、本当の理解に至らず知識が定着しない心配があります。
また集団授業のなかで、苦手分野が取り残される場合があります。授業でわからなかったところは、自分で講師に聞きに行くなど積極的に取り組まないと、思うような学習の効果が出ないかもしれません。
予備校の注意点・落とし穴については以下の記事もぜひご覧ください。
四谷学院のカリキュラムのご案内
予備校の授業に起こりがちな欠点をカバーしてくれるのが、四谷学院の「ダブル教育システム」です。ダブル教育システムで取り入れている「2つのポイント」をチェックしてみましょう。
科目別能力別授業
大抵の予備校では、志望校やテストの総合得点でクラス分けします。そのため、苦手科目の授業についていけなかったり、得意科目の授業が物足りなかったりする「科目ごとのレベルの不一致」が起こりがち。
四谷学院の科目別能力別授業は、科目と能力の2つでクラス分けするのが特徴です。つまり科目ごとに自分に合ったレベルの授業が受けられる仕組み。自分のレベルに合った授業を受けられるので、無理なく理解が進み、効率的に成績向上を目指せます。
科目別能力別授業の詳細はこちら!
55段階個別指導
科目別能力別授業で得た理解を、解答力につなげるのが55段階個別指導です。
55段階個別指導では、過去の入試問題を徹底分析して作られた55テストを受験し、理解に穴があるところ、考え方が不完全なところ、表現が不適切なところを段階的にチェック。解答力が身に付いているかを確認しながら、級を進めていきます。中学レベルから東大レベルまでの55段階を、スモールステップで無駄なく学べるよう体系化して指導しています。
55段階個別指導の詳細はこちら!
自治医科大学入試は丁寧に解く力が重要!
【自治医科大学の入試概要】
- 医学部は一般入学試験のみ。看護学部では一般入学試験と指定校推薦がある。
- 難易度はやや難。
【自治医科大学の入試データまとめ】
- 一般入試の学部での実質倍率は、医学部18.6倍(2021年度)、看護学部3.71倍(2020年度)。
【勉強方法まとめ】
- 基本的な学力を十分に身に付け、教科書や用語集を丁寧に学習するのがおすすめ。
- 時間が足りなくなる科目が多いので、過去問などで時間配分の練習もしておく。
自治医科大学は、難易度は標準からやや難レベルですが、特に医学部では納付金の貸与と卒業後の勤務状況により返還が免除されるシステムもあり、志望者が大変多くハイレベルな戦いになりやすい大学です。基礎を徹底したうえで、いかにミスを少なくして問題を解くかが重要になってきます。そこでおすすめなのが、四谷学院の「ダブル教育システム」。
自分の学習レベルに合った授業で、効率的な成績向上が望めます。気になる方はぜひお気軽にお問い合わせください。
※本記事でご紹介した情報は2022年10月3日現在のものです。最新の情報は大学公式ホームページにて必ずご確認ください。